特集/ケーススタディ9

構造的合理性の追求の結果として

「ジャングル」の上方、幹と枝が交錯する高さ2.5mの部分が住まいのための空間である。4本の柱は外周に立つが、2本は内側に立つ。そのうちの1本は間仕切り壁に吸収されているが、もう1本は広間の中央、入り口・台所ゾーンと居間・食堂ゾーンのあいだに位置し、通行を妨げるかのように方杖が床から天井まで斜めに伸び、天井面では広間の横幅いっぱいに広がっている。空間の広さからするといかにも巨大だが、不思議なことに過剰な圧迫感はなく、しっくりと空間になじんでいる。その理由は、方杖、直角二等辺三角形の開口部、1階からの階段の囲い、3階への急階段、さらには45度に振って張られたフローリングと、この空間の中にあってはいくつもの斜線や斜材がそれぞれに強い主張をなして存在していることにある。直交の幾何学と斜めの幾何学が絡みあい、共鳴し、その共鳴の内に中央の巨大な柱と方杖も吸い込まれて、スケールアウトの異物感が生じていない。
 外周の柱、方杖、梁、壁、開口は面が揃い、凹凸がない。また、着工間際になって施主の要請により3階が加えられることになり、正方形平面の直方体の上に半円筒がのせられ、そこにふたつの丸窓が付けられている。これらによって外観は、幾何学的な立体と平面的な図形の気ままなコラージュの様相を呈している。そもそもは難しい条件を克服するための構造的な合理性の追求の結果であるはずが、外観からは構造的な力感はまったく感じられず、軽快でグラフィカルでさえある。


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