特集/ケーススタディ9

コンクリート「ジャングル」

 いくつかの予兆はあったとしても、1976年、「上原通りの住宅」の出現によって、篠原の2度目の脱皮は誰の目にも明らかになった。最初の脱皮が70年の「未完の家」の出現で明らかになったように。
 小さな商店が並ぶ道を折れてすぐ、細い路地沿い、低層の住宅の密集地が敷地である。前面道路際には5mの高さ制限がかかる。そこに写真家である施主の住まいとスタジオ、さらに2台分の駐車スペースを確保するという条件に対し、1階スタジオの床面を道路より下げ、屋根を無梁版、外周をコンクリート壁とし、2階床の一部を張り出し、その下を駐車スペースとすることで、ようやく必要な空間が確保されている。
 コンクリートの外殻を2本×3列、計6本のコンクリート柱が支えている。絶対的な高さ不足のなかでスラブの薄さを保ちながら2.8mの張り出しを可能とするために、420㎜角の柱には長短の方杖が直交する形で付けられている。方杖の角度はいずれも45度。2層分を1度で打設した柱は、2階の木造の床が張られる前には、垂直の幹から太い枝が四方に向かって勢いよく伸びた林のような様相を呈していたことが写真から知れる。戯れに、「ジャングル」と篠原は評した。


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