特集/インタビュー

まちをつくるための道筋を示す

——ファサードの開口について、つねに強く意識されているように感じます。

塚本 今ファサードと窓に一番こだわっているのはアトリエ・ワンだと思います。家のファサードへのこだわりは、坂本一成先生を引き継いでいるつもりです。

——1960年代、70年代は、「建築は内側だ」という意識が強すぎたんでしょうね。

塚本 近代に入って建築家という職業が確立していき、その人たちが住宅をつくるようになります。そこでできなかったのは端的にいうと、「まち並みをつくる」ことですよね。まち並みをつくるのに欠かせない共有性についてはお手上げで、結局、個人主義に走って、すごく変なまちをつくってしまった。私たちはそれをなんとかしたい。まちとしてどうつくるかという筋道をきちんと示したい。まわりに建てる人が、「ああやって建てればいいんだ」と思えるようにつくる。道路側の立面は最も意識が集中するところですからね。都市自体は新陳代謝して変わっていくから、動いているものに対する提案というか、「動態介入」のように少しずつ方向づけをすることが求められています。

——この住宅では、2層にわたってつくられたファサードの開口も印象的です。

塚本 小さい建物だから、凛とした立ち方をしていないと建築にならないというか……。小さい犬が、シャキッとして、ワンワン吠えているのってすごくいいでしょ(笑)。これ、言葉ひとつだと思うんですよ。「町家」という言葉が共有されたら、それだけでずいぶん変わる。町家としてつくるか、狭小住宅としてつくるかは、紙一重なんです。コストも法規も変わらないし、なんら新しい困難が生まれるわけではない。でも、町家という言葉があるだけで歴史的な建築と都市の関係が再生産される。
 70年代の都市住宅は、建築家が都市に対して武装している状態で、それが建築家としての矜恃だったわけです。だけど私たちは、それを解除したほうがいいという仮説を立ててやってきたんですね。


>> 「スプリットまちや」の平面図を見る
>> 「スプリットまちや」の断面図を見る

  • 前へ
  • 5/6
  • →
  • Drawing
  • Profile
  • Data

TOTO通信WEB版が新しくなりました
リニューアルページはこちら