特集/インタビュー

存在が美しいこと

——物見塔やドーマ窓も、なつかしさや家らしさの要素に通じているんでしょうか。

塚本 物見塔は、空気抜きであると同時に、奥さんが東京タワーを見たいと言うので、よじ上る煙突として提案したら、ぜひという話になって……。

——外観がレンガ風に見えるのは……。

塚本 屋根のシングル葺きを、そのまま張り上げているんです。

——あれを許容しているところがおもしろいなあと(笑)。

塚本 ストライクゾーンが広い(笑)。実践的なものが好きです。実践的であって、その結果が美しくなるような……。要するに、「見た目が美しい」より、「存在が美しい」であってほしい。建築にもそれはあって、古民家は存在が美しいわけです。農村の風景も、見た目としても愛でるようになったのは最近のことで、存在として美しかったからみんながそれを続けてこられたのだと思う。
 それと私は、クリシェ、つまり紋切り型に興味がある。それは世の中にいっぱいあって、かつ、みんなの意味のシステムのなかで、ある定まった関係性をほかのものと結んでいる。だからそれをちょっと変えると、まわりまでグッと変えてしまうパワーがある。

——クリシェといえば、「ハウス・タワー」(2006)のファサードにアーチ型の窓がありましたね。ああいう窓は、とても俗な住宅に使うものと思っていたので驚きました。

塚本 あれは最初、四角い窓で検討を始めたんですが、どうも牢獄の監視塔のように悲しく見えてしまう。それで、屋上のパラペットを下向きのアーチにえぐって、中世の廃墟感を出しました。


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