特集/インタビュー

新世代の町家をつくる試み

塚本 日本の近代の建築家は、民芸運動とうまくいかなかったんです。民芸の人たちは建築家と話が合わないので、結局、自分たちで古民家を移築したり、自分なりに民家調につくるという形で展開する。10年遅れでやってきた篠原一男初期の木造住宅が、民芸運動と接続する可能性を示したぐらいです。

——若い人たちから話を聞くと、昭和初期のものを好きな人が多いですね。

塚本 やはり社会が上向きで、日本の古いものに対するセンスがまだ死んでいなかった時代ですよね。私も好きです。町家なんか大好きで、この住宅も町家と呼んでいます。

——塚本さんは、新世代の町家の定義として、「家の外で暮らす機会がある」を条件のひとつにされていましたが……。

塚本 本当は、道に面してそれをつくるのが理想です。ここの環境はそこで食事をしても楽しい感じではなかったから、中庭にしました。町家の「坪庭」を再解釈したり、「通り庭」の特徴を生かして、2階の窓を揃えて視線を貫通させたり……。町家がずっとやってきた「奥行きをどう使うか」というテーマは変わらないけれど、今の時代に東京で試みるという実験です。それと、「町家」と言ってしまったほうが、「まちをつくる建物」ときちんと認識できるからいい。「小さい家」というだけだと経済的な問題に回収されてしまう。


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