木村松本さんが登場し、インタビュー開始。まず、こちらが一番知りたいことをたずねた。
「このビルはレトロですね。設計するときからレトロを意識していたのですか」
「そんな意識は、『K』を設計しているあいだはなかったですね」
私の質問にはおもに木村吉成さんが答えてくれたのだが、言葉を選び、ところどころで間を置く淡々とした語り口は、『悩む力』の著者、姜尚中さんにそっくりだ。
レトロというあなたの見方は許容するけれど、私たちはそんな考え方で「K」をつくってはいない。いきなりの肩すかし。
そこで第2の矢を放つことにした。彼らが住宅雑誌で述べていた「領域設定」の問題である。内と外をどうつなごうとしたのかと問いかけると、木村松本さんは「街を使う」と言った。
「街を開く」ではないよね。初めて聞く表現。街を使うってどういうこと?
「1階の天井高は入り口側の道路の横幅の『数字』とほぼ同じです」
1階の天井高は4450㎜ある。それが横の道路幅と同じなのだと言う。
「道を歩いてきてドアを開けると、その道路幅と同じスケールが垂直方向にあるから、そうすると身体感覚として外と内がスムーズにつながるんです」
うーん、それは牽強付会にすぎないのではないか。「街を使う」とは、「街のスケールを住宅の中に使う」ということなのだろうか。
1階はフィンランドの雑貨や木工作家である施主の作品を展示販売するギャラリーであり、街の仲間とイベントをやる拠点であり、施主が作品をつくり、あるいは大工仕事をするときの作業場であり、果ては、長さ3mの材木を置いておくための倉庫ともなっている。だから大きな気積が必要だ。その決め手の「数字」がビルの横の道路幅だった。
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