特集/ケーススタディ

リノベーションのような

 大阪。地下鉄の出口から現地まで幹線道路をタクシーで走る。同行の編集者が取材前「控えめな町工場のようだ」と評した「K」は、雑居ビルの街並みに溶け込み、事前に写真を見ていなかったら車はそのまま通り過ぎてしまったろう。
 現場に立つ。遠目には、壁面に繰り返される帯のせいだろう、水平の流れが強く意識されたが、「K」に近づくと垂直性が高まる。どう見ても住宅には見えない。まわりから浮き上がった新築ビルでもない。すでに「K」を見ていた建築史家、倉方俊輔さん曰く、「ビルのリノベーションとしか思えなかった」。ちなみに、倉方さんは木村松本さんと同年代だ。
 中をのぞくと、高い天井。銀行や町工場のリノベーションといっても通ってしまうようなたたずまいが、眼前の楼閣にはあった。「K」の間口は私の足で9歩弱の4.8m。奥行きは9.5m。ざっと1フロア45㎡。2階と3階が住居だが、合わせて90㎡強。象牙色のガルバリウム鋼板スパンドレルの縦目地に沿って上方へ眼を走らせながら、4人家族で住むには狭いかもしれないと思った。
 配置図を見てもらうと一目瞭然だが、「K」は角地に立っている。建物を敷地の南側ぎりぎりに寄せて生まれた北側(正確には北東側)の空き地は、1本の落葉高木を介して歩道とつながり、入り口は木の横にある。この空き地は行き止まりの「私有地歩道」と化して横の道路とひとつながりになり、背後には高層マンションが控えていた。


>>「K」の平面図を見る
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>>「K」の開口部平面詳細図を見る
>>「K」の開口部断面詳細図を見る

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Movie 「K」

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