特集/ケーススタディ3

箱による空間の分節

 この住居の2階には、2360㎜×2260㎜×高さ1700㎜のシナ合板仕上げの家具のような「箱」が置かれている。この箱は、2階と3階をつなぐ中央の内部階段を仕込み、さらに2階のプライベートなスペースを確保するためのゆるやかな仕切りにもなっている。寝室などの用途上、閉鎖性は求められたが、西側の出窓からの光を全面に取り入れたり、間取りの回遊性を重視したため、完全に部屋として隔てることも難しかったという。そのため、中央に大きな箱を置くだけ、という大胆な方法による分節が試みられたのだ。そして、それぞれのスペースは、部屋として壁で囲われるわけではなく、箱の周囲になんとなく確保されている。北側に客間、南側に寝室、東側に廊下、西側に書斎である。既存軀体や住まい手の目線、各スペースの機能などから検討されたという配置とスケールのこの箱は、フロア全体を明るく、そしてゆるやかにつなげながらも、それぞれの場所を生かした適度な距離感を生み出していると感じられた。
 家具のような箱を置くだけで各スペースがしっかりと性格付けられているのは、なぜか。それは、場所の性格に対する壁の強い規定力によるものだと思う。この場合、箱の壁である。周囲の機能に合わせて、箱の壁は各面で異なっている。出窓側の面には本棚が造り付けられ、箱と出窓のあいだを書斎として使えるようにしている。また、南側の面には壁掛けテレビが取り付けられ、広い収納もあり、寝室らしい設えがなされている。部屋として囲われていなくとも、こうした壁の設えが、その周囲の場所の性格を決めているのだろう。
 2階の間取り、つまり横のつながりは、このように箱によって再調整された。また、この箱の上面が中2階の踊り場であるため、じつは縦のつながりもこの箱が担っている。
 1700㎜の高さの箱と3階スラブのあいだには730㎜、梁とのあいだには230㎜の隙間があり、人が移動することで視線が抜けたり遮断されたりしながら、2階、中2階、3階の縦方向をゆるやかにつないでいるのだ。既存建築物をリノベーションするにあたり検討する必要があった縦と横のつながりの再調整は、いずれもこの家具のような箱を設置する一手によって果たされたのである。


>> 「目黒本町の住宅」の断面図を見る
>> 「目黒本町の住宅」の2階平面図/展開図を見る
>> 「目黒本町の住宅」の3階平面図を見る

  • 前へ
  • 3/4
  • →
  • Drawing
  • Profile
  • Data
Movie 「家具化した壁」

TOTO通信WEB版が新しくなりました
リニューアルページはこちら