特集/インタビュー2

人の認識を操作する

——アトリエ棟は壁のつくり方も違いますね。

島田  この住居棟は抽象的な壁ですが、アトリエ棟は、ブルータルというか、素材そのものがバーンと出てくるような、率直な壁みたいなものをつくっています。要するに、2種類しか材料がない。構造体の外側に、断熱と防火と構造を兼ねて高圧木毛セメント板が張ってあり、その外に透光性のある防水層としてポリカーボネイト波板が取り付けてある。コーナーも当然ポリカだろうというので、ポリカの役物で挟み込んでいる。ほぼ同じ仕組みで、屋根もやっています。木毛セメント板を内側から取りはずすと、採光面がつくれるわけです。
 アトリエの使い方がどんどん変わるという話は聞いていました。実際、竣工して1年後くらいにスタッフが来ることになって、もうちょっと断熱性能があったほうがいいということで断熱材を入れたり。あと、壁を立てたり、いろいろとされています。
「山崎町の住居」(以下、「山崎町」)でも、アトリエ棟の構成に近い壁をつくっています。ライトルームと称して、構造材の外側にポリカーボネイト波板、内側にツインカーボを張り、透光性のある壁から採光している。もうひとつのサニタリーは、そのあいだに透光性のある断熱材を入れて、ぼんやり光る壁みたいなものをつくりました。そこは山間部の集落ですが、窪地なので「比叡平」よりも日照時間が少ない。明るい住宅がほしいという要望があって、このような素材を使っています。

——「山崎町」では3つの小屋が立ち上がっていますが、建物全体は掘り下げられて腰壁がまわっています。囲まれて安心できる感じを受けました。

島田 ええ、掘り下げたことで、屋根が地面に近くなって上を庭のように使えるのと同時に、半分地面に埋まった、非常にどっしりした安心感のある場所ができています。天井高を2300㎜とやや抑えた、広い空間です。家型というのは天井面が高くて伸びやかな場所になりますから、対比的につくっているわけです。先ほども言ったように、しっとりとした暗がりのある、半地下で広々とした場所から、光に囲まれた伸びやかな場所に、上がったり下りたりという体験自体がおもしろいのではないか。住宅の中にそういうのがあるといいなと思っています。


>>「比叡平の住居」の平面図を見る
>>「塩屋町の住居」を見る
>>「山崎町の住居」を見る

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