——以前、雑誌で「結晶のように」と書かれていましたが、結晶化の条件には、プロポーション、素材、色などがありますよね。
- 島田 そうですね。多様な場所をつくりたいのですが、フォールディング・アーキテクチャーのようにたくさん手を下したくない。この住宅の場合、ほとんど2手くらいです。壁を倒して、合致させて……。僕がやりたいのは、結晶と同じように、単純なルールによって複雑な場所をつくりたいんですね。
——階段を上がっていくと、風景が反転するような感じがある。そして屋根に寝転びたくなるような、身体性を感じます。
- 島田 繰り返しになりますが、この家のボリューム自体が、人の認識や知覚を操作しています。同時に内部でも、勾配の天井面を抜けていくと、屋根の上に出たように感じる。その上にまた、同じ勾配で同じ大きさのトップライトのある屋根がかかっている。それが反転を続ける印象を与えます。
大学2年のときにセルフビルドでつくったものも、階段を上がり下りしてほかの層に入っていき、そこでまた別の体験をするというものでした。そういう、人間が身体を伴って移動すると、移動自体が何か知覚に影響を与えるというのがおもしろいと思っているんでしょうね。それを積極的に意識することはなくて、できてみたらそうだったという感じです。体験をつくり出したい。その空間ならではの体験ができるというところまで考えつづけています。