特集/対談+ケーススタディ3

街に置かれた箱の表情

畝森 もうひとつ、「四角」について言うと、それは街に対する形の表し方だと思うんですね。建物の形というのは、室内空間の問題以上に、街に対して自分はどういるんだという個性の表し方です。僕は、まわりが密集しているから、あえて四角い小さな建物をドンと置いた。この街にはこう建つんだという意思表明だったわけです。根津さんは、街に対するこうした小さな住宅のあり方をどのように思われますか。
根津 僕は畝森さんと違って、街になじませようという意識が強いんですね。目立たせないで、無造作に、気がつかずにフッと通り過ぎてしまうくらいの感じにつくろうと思っていました。
 いろいろな建物を見ていると、設計者の思いと違う使われ方をしているパターンが多いですよね。街に対してあえて閉じようとしている建物もあれば、それに対して積極的に開こうとしている建物もある。僕はどちらも行きすぎているように感じていて、この街のなかでは無理をしないようにしたいと思いました。たとえば、前面道路に対して大きな窓ガラスをつくると、住まい手は何かを張ったりカーテンをかけたりして、視線のバランスを調整しはじめます。結果的にそうなるのであれば、そこまではキチッと想定して設計をしたい。
畝森 「トシゴヤ」は、敷地境界線とか法規などで、他律的に建物が出来上がっていますね。四角という形の決定についてはいかがでしょうか。
根津 ええ、法規的なボリュームでしか決まっていないのですが、同じ四角でも違いが出るのは、やはりスケールの問題が強くて、「Small House」がまわりと距離をとりつつひとつ頭が出ているのに対して、「トシゴヤ」は、まわりに歩調を合わせている。それと、ボックスという形の選択については、プロトタイプに通じるものにしたいという思いがあるからですね。畝森さんの構成の潔さ、余計なものを排除していく意志にも、同様なものを感じます。


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