特集/対談+ケーススタディ3

新たな時代へ向けた建築のあり方

——2作はある意味で、とても対照的な建物だと思いました。「Small House」は建築的な意図に満ちあふれているし、「トシゴヤ」はそれを抑制しています。

根津 確かに、畝森さんの住宅は気合いの入ったデビュー作という感じですよね(笑)。
畝森 無我夢中でした(笑)。「Small House」もかなりのローコストでした。ローコスト住宅は大変ですが、本当に必要なものは何かと考えさせられますね。
根津 今、時代が変わってきていて、世の中には空き室がいっぱいある。そこで新築を建てるなら、こういうスタンスで行くという建築家からの表明を出すべきだと思います。たとえば震災以降、公共建築も住民との対話を重視して、そこからものをつくっていく動きがある。リノベーションにしても、お施主さんと一緒になってつくっていく流れが出始めた。僕は、建築と住む人の距離を変えたいと思っている。自分で洋服をつくったり、野菜をつくって食べたりすると、衣食への意識が近くなる。一般の人が住環境をつくることに参加して、建物への思いを高めることに興味をもっています。
畝森 そうですね。僕は内装が変わっていくことは、まったくかまわないと思っているんです。でも、絶対に重要なのは骨格です。それがないと、建物がなくなってしまいます。
 じつは、今設計している建物はこれより小さくて、敷地が7.5坪です。カバン職人さんの工房兼店舗兼住まいで、都心の大通り沿いにRC造の5階建てを計画しています。クライアントは、いずれ結婚されてふたり住まいになるかもしれないし、子どもができるかもしれないし、あるいは建物全部がオフィスになるかもしれない。用途がないに等しい状況で、すごく現代的だなあと思う。北山恒さんは、こういう時代だから新しいイデオロギーが生まれる、とよく話されています。今は建築の純粋性がより求められるし、新しい建築をつくれるときなんだと感じています。


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