——この家は断面が魅力的ですね。中間の弟さんの部屋には隠れる場所があったり、上階のお姉さんの部屋は一段上がることでロフト状になって切り替わったり。

根津　実際は、お姉さんと弟さんの生活時間が異なるので、やはり、どこかで距離をとらなくてはいけない。とはいえ、ふたりで生きてきたという思いがあるから、精神的には強くつながっていると思うんです。付かず離れずという微妙な関係を意識してつくっています。

畝森　こういう部屋の形を、普通は個室とか寝室と呼ばないですよね。たとえば、2700㎜×3600㎜という6畳の寸法ではない。これがルーズということなんだろうと思います。細長くてもいいから、道路側から奥までの長さを全部とるんだと。そういう寸法感覚は、よくわかりました。

根津　弟さんが寝るところは、想定していたところではないんですね。お姉さんの部屋も、中途半端に細長いところに椅子やテーブルを置いて使っている。こういう部屋の使い方があるのかと気づかせてもらえる。ここに来るたびに、お施主さんの想像力はたくましくておもしろいと思いますね。

畝森　何か、空間に奥行きが出ていますよね。この階段は、別の場所にまとめる計画もあったんですか。鉄砲階段じゃなくて、折り返しとか。

根津　最初の頃のスタディではありました。「Small House」ではフロアごとに用途を分けていましたが、ここではお施主さんから要求された部屋をワンルームに収めるのは、フロア数が少なく無理でした。でも、こんなに狭い敷地のプランを壁で仕切るのは気持ちが悪くて、中階段で振り分ける方法がしっくりきたんですね。

畝森　1420㎜の幅で、6mの奥行きというのは、けっこう特殊なプロポーションですね。

根津　ええ。ただ、900㎜幅といった廊下のようにせず、そこにちょっとしたゆとりがあるからこそ、窮屈さがぬぐえて広さを感じられるのだと思います。

畝森　そうですね。部屋名ではくくられない、ほかでも使えるようなルーズさが出ていて、そういう点で「Small House」と似ていると思います。僕の場合は四角形で同じように並ぶのに対して、根津さんは奥行きで対処している。それからこの内装は、たとえば、木下地に何かを打ち付けていくことをイメージしているんですか。

根津　いや、つくり手として将来的にこれをどうしていくという想定はしていなくて、そのあたりもつくり手から住み手に投げかけているといっていいと思います。

畝森　言葉は悪いですが、作業場というか、屋外に近いような新しい室内空間をつくろうとされているのかと思います。たとえば、1階にいると玄関がすごく明るい。それは、街が自分の庭であることを表しているように感じます。単純に開くのではないけれど、より外部に近い感じがしておもしろかったです。

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