
- 畝森 それから、平面が小さいことによる快適さというのがあって、それは外部に近いことです。人間的なスケールを超えた窓を開けると、この小ささを一気に広げられるんじゃないか。だから、大きな窓を開くと、建物全部が屋外になるような状態を目指しました。壁にトリミングするように小さく窓をあけるのは、自分で屋外環境のサイズを決めているような気がするんですね。抽象的な話ですが、光や風は無制限なもののはずだから、自分で窓の形、つまり環境のサイズを決めてしまうのがいやで、柱と梁の中を全部窓にして、それがドアだったり、はめ殺しのガラスだったりする、そういう原理的な建物を考えました。
- 畝森 僕は岡山の田舎にある古い家で育ちました。隙間風は入ってくるし、気密性はよくない家でしたが、ちょっと開けただけでバッと外とつながるという、田舎特有の外との連続というのは、僕のなかでは原風景としてあります。こういう街のなかでも、同じことを起こす方法があるんじゃないかと思っていました。窓と窓が接するくらいに密集しているところで、人が呼吸するのと同じように、建物が呼吸するような仕草が起こる。ドアの面積が大きくて、かつ部屋は小さいので、上から下まで風が一気に抜けていくことは、ある程度、予想をしていました。
- 根津 螺旋階段のところから上下に抜けるのは、すごい効果だと感じましたね。
——2m幅のドアを少し開けると、光や風の変化が劇的ですね。





