特集/対談+ケーススタディ3

寸法と配置だけでつくる都市住宅

——外壁を下見板張りにした理由はいかがですか。

畝森 街なかに建つので、既製品をバーンと張るのがいいと思ったのと、4mの真ん中、2mで分けているので、2枚で外壁が張れちゃう(笑)。この建築の小ささを表す意味もありました。フレキシブルボードの下見板張りにしたのは、防水上のメリットとともに、石とか木板とか、いろんな見え方をするあいまいさがいいなあと。多少の色ムラが出ますが、それもいいと思いました。1枚1枚の濃淡を見て、図面に描いて指示しています。

——構造のディテールについて聞かせてください。

畝森 ちょっとマニアックなことばかりで(笑)。ただ、僕は構造にすごく興味があって、構造は建物を建物たらしめているし、構造が人の行動や環境を規定すると思っているんです。「Small House」では、構造家のアラン・バーデンさんとかなり濃密に、やりとりをしています。先ほど言ったブレースも、通常の構造の考え方では、芯からずらすのはよくないんですが、粘り強く設計してもらいました。また、それを空中で維持しながら現場溶接するのはすごく難しい。工務店の力量にも支えられています。
根津 すごくパワフルに細部までつくられていて、さまざまな判断が建物にしっかりと表れているという印象を受けました。街や建物に対するあり方は、僕の意識と共有感覚があるけれど、表現としては違う。僕は人を受け入れるのにこちらから手を差し伸べるけれど、畝森さんは根本(こんぽん)だけをしっかりつくり込んで、後はお施主さんの使いたいようにという潔さがある。拝見すると、お施主さんはそれを使いこなしていますね。
畝森 ここでは、複雑なことはほとんどやってないんです。単純に床があって、それを螺旋階段でつなぐ。「Small House」は、極端にいうと寸法と配置だけで建物をつくっています。それが"小さい"ということと"都市住宅"ということに対するひとつの解答なのかと考えています。


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