看護しやすく安心感のある病棟

 設計の第1のポイントは、土地の形状を非常にうまく生かしている点。もともと敷地周辺は棚田だったため、途中から一段高くなっており、約5mほどのレベル差がある。これを均すのではなく、なるべく元の地形をうまく生かすことによって、外来患者や見舞客は1階から、職員や給食などのサービス業者は地下の通用口からアプローチができて、おのずと動線分離が明確になっている。
 もうひとつ特徴的なのが、2~3階の一般病棟のプランで、図面を見ればおわかりのとおり、L形ユニットを4つ組み合わせた井桁のような形をしている。
 この4ユニットからなる井桁プランには多くのメリットがある。たとえば、メインのスタッフステーションは重症患者用ベッドゾーンの向かいにあたるコア部分の両サイドに配し、それ以外に井桁の4つの交点近くにサテライトステーションを配置してあるが、これによって看護が行き届きやすく、かつ患者の安心感も増す病棟を実現している。
 北川さんいわく、「じつは10年ほど前に入院して、ステーション前の病室に入ったんですが、看護師さんの声が聞こえるだけでも、けっこう心の支えになるんですよ。そういうことから考えた部分もありますね」。
 また、将来の病棟再編時に、ユニットごとに専門病棟として特化させるなど、病棟の区分けがしやすいだけでなく、設備シャフトもそれぞれ独立しているため、改修の際にも1ユニットずつ、順次、工事が行える。
 ちなみに、設備シャフトは井桁の交点部分の4カ所、地下1階から屋上まで貫通しており、屋上には風光によって回転し風を誘引できる排気ベンチレーターが設置され、自然換気を行っている。これ以外にも、メンテナンスピットの熱利用など自然の力をできるだけ活用し、省エネルギーに配慮した点も設計のポイントのひとつといえる。
 実際に病棟を見学すると、井桁状に延びた各廊下の突き当たりからは四方に広がる山並みや町の風景が望め、東西2カ所にあるオープンな食堂の開口部からも自然光が射し込んでくるため、全体に明るく開放的な印象。各病室もそれぞれに景色が楽しめ、居心地がよさそうだ。井桁プランは自然光を取り込みやすい点もメリットといえるだろう。


>> 「伊万里有田共立病院」の一般病棟平面図を見る
>> 「伊万里有田共立病院」の4床室用トイレ平面図を見る

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