分散集中型トイレで4床室のプライバシーを確保

 次に、病棟のトイレも、L字ユニットの角に計4カ所設けられている。どの4床室からもほど近く、これなら病室内にトイレがなくても十分、許容範囲だろう。内部は男女とも2ブースずつ、オフィスビルの多機能トイレ並みの広いスペースを確保、その奥に男女どちらのトイレからも行ける汚物処理室がつながっている。トイレは検尿の場を兼ねているため、患者が自分で汚物処理室内の検尿置き場に行きやすいようにと考えたプランだ。
 日建設計設備設計部の片岡えりさんに水まわり機器選びのポイントをうかがうと、重視したのは節水性と清掃性・衛生面とのこと。
 節水性で画期的なのは、汚物処理室に備えた汚物流し。日進月歩の一般的な節水型大便器の開発に比べ、後れをとっていたが、ようやくTOTOから1回の洗浄水量が6Lの待望の新製品が出たため、採用したという。以前の製品は16Lだったというから、節水効果はかなり期待できそうだ。
 また、床の清掃性を考慮し、便器は大小ともに壁掛け型を採用している。
 さらに、注目は各病室に設置した洗面器。一般的な病院の病室にある洗面器というと、両側が壁に付いたカウンター式で、水栓もカウンターから立ち上がったタイプが多いが、これだと壁との境目や水栓の根元が汚れやすく、掃除もしにくいことから、壁から独立し、かつ水栓も壁出しのオリジナルデザインを特注したもの。病室では水をためる必要もないため、細菌が繁殖しやすいオーバーフロー用の穴もなくし、物を置いて不衛生になりがちな脇の平場部分も最小限にした。病院設計だからというより、普段の生活のなかで感じていることがヒントになったと北川さんは語る。
 このほか、医療スタッフ用手洗器にも工夫が見られる。たとえば、処置を行った後、しっかり手を洗いたい場所には、水が飛び散りにくく、腕まで洗いやすい形状を考え、掃除・洗濯用のマルチシンクを転用。水栓は手術室で用いられる手かざしセンサー式を組み合わせた。
「看護師さんなど医療スタッフは院内感染対策のため、頻繁に手を洗うので、しっかり洗う、こまめにさっと洗うといった用途に合わせて、手洗器の形状を選びました」とは片岡さんの弁。
 北川さんによれば、病棟のトイレは各病室内に設けられた例もいまだに多く見受けられるが、大部屋の場合、音やにおいの問題だけでなく、前に誰が使用したかわかると次に行きづらいといったプライバシーの問題もあるため、ここでは分散集中型を採用したという。
 北川さんはこのほかにも、自身の経験をもとに、プライバシーを考えて4床室の向かい合うベッドの位置をずらしたり、入院患者が見舞客と気がねなく過ごせるよう、随所に交流の場を設けるなど、さまざまな配慮を設計に盛り込んでいる。そうした細やかな気配りの集積が、今後、病院の居心地につながっていくにちがいない。

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