特集/ケーススタディ1

家全体を感じる光

 駅からの道中には武蔵野のおもかげが残るものの、比較的建て込んだ住宅地に敷地はある。道路から15mほども奥まったところ、豊かな植栽の先に控えめなファサードが見える。旗竿状敷地の場合、建物の顔として、アプローチから見える面積を極力大きくするのが一般的だ。それがここでは、小波のガルバリウム鋼板という質素な素材による壁面がつつましげに顔をのぞかせ、小窓と「妻入り」の玄関庇が見えるだけ。最大幅が2.7mもあるアプローチは明確に前庭として意識され、建物に至るまでのストーリーが展開していく。
 引き戸の玄関を入ると、また小さな驚きが待っている。土間の先と正面廊下の先に、それぞれ開口からの光が漏れているのが目に入る。そして土間吹抜けの上部からはトップライトの光が下りてくる。つまり、平面方向・高さ方向の最大距離をすぐに把握でき、住宅のボリュームを感じることができるのだ。コンパクトな住宅でありながら、視線の抜けが心地よく、ひとつ屋根の下に暮らしているという安心感を与えてくれる。
 脇の小窓は、200㎜×300㎜で20㎜厚のダルガラスが嵌め込まれている。本来は砕いて工芸に使用するものだという。壁見込みが白く仕上げてあるため、壁とゾロに赤い寒天状のものが納まっているようにも見える。そして土間全体に淡い赤のグラデーションを描き、あたたかな雰囲気をつくり出す。逆に、帰宅する夕暮れ時には室内光に照らされ、道路からはこの家の存在を示す赤いしるしとなる。
 吹抜けに導かれるように、階段を上がっていく。手すりは18㎜厚のシナ・ランバーを2枚重ねし、半丸の棒をのせて仕上げた、薄くシンプルなもの。腰壁として上下階の雰囲気をやわらかくつなぐ。


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Movie 「関前の家」

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