特集/ケーススタディ

建築の意図を際立たせるために

 もうひとつ、気づいたことがある。こうした空間の魅力を支えているのは、生活への配慮とディテールなのだ。
 たとえば、食堂につづくキッチンがすごい。カウンターの一部が顔を出したセミオープンタイプだが、その奥には洗濯乾燥機、サブのシンクなどが備えられ、アイロンがけなどすべての家事をここで行うことができる。ダイニングキッチンの散らかったイメージはみじんもない。初めから整理整頓、生活臭の処理が意図的にされている。
 この東棟は、杉の小幅板を縦張りにした外壁が室内まで入り込んでくる。先述の3種の引き戸(木製建具)で仕切るわけだが、壁の連続性を見せるように、いわゆる枠は付いていない。そして風を防ぐために、一番外側のガラス戸が当たるところだけ、1分(約3㎜)ほど掘り込んである。また、框の見込みには丸い穴があいている。ここは上向きに20度の角度で掘られており、指を入れて開け閉めができる。こんなディテール、心遣いの積み重ねが、静謐な空間から確実に伝わってくる。


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