
シーケンシャルな魅力をさらに深めているのは、空間を絞り込み、また開放するという設計である。平面のくびれは、天井高の操作によってさらに効果をあげる。居間3750㎜、食堂2400㎜に対し、玄関2000㎜、地下通路1960㎜、2階への階段踊り場1900㎜と抑えてある。
新関さんは「ここに来るまでの余韻、それと同時にここにいることが大切」。また「この家では、いろいろな質の場所をつくることがテーマ。そして、空間と空間をどうつなげるかが重要です。『分節と連続』が成り立つつくり方をしたい」と言う。
建て主さんは最初の打ち合わせで「食堂と居間は別なんです」と言ったそうだ。そこから、付かず離れずの距離にあり、庭を介してお互いが見え、声も届くという両者の関係がつくられた。建て主さんの「この家には微妙な距離感があって、誰かが閉じ籠もっていることはない」という言葉もうなずける。人の気配を感じ取れる距離なのである。
別棟に遠く離れた浴室に入るとき、子どもたちは、「お風呂に行ってくる」と言うそうだ。生活のなかでの距離を実感させてくれる言葉ではないか。取材当日も引き戸を開け放った食堂でお話をうかがったが、隣の西棟、居間のオーディオからはかすかにやさしい音が流れてきた。
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