特集/ケーススタディ

ずれて連なっていく空間

 そこは少しずつずれた外壁に囲まれ、空に向かって開かれた中庭。壁に当たって曲がりながら進むと、奥まった玄関に通じる。
 同様な印象は室内でも感じられる。白い光に満ちた大空間である居間には、そこから地下へつながる小さな階段がある。トップサイドライトに導かれて下りると、クランク状の通路があって、3段上がると寝室だ。視線の到達距離を長くという話はよく聞くが、ここではそれがねじれながら、曲線的に展開している。
 ある空間から次の空間へ、心地よく導かれていく体験。たとえば美術館の評価に、鑑賞の経路を楽しめるか、避難誘導的になっていないかというのがあるように思う。NRSにおける、空間がずれながらつながっていくおもしろさには格別のものがある。それは、めぐっていく時間のリズムがもたらしてくれるのだろう。
 また、さまざまな経路でつながった空間は行き止まりにならず、特徴ある開口部で中庭につながる。食堂は、ガラス戸、簾戸、紙障子を建て込み、壁に引き込めば中庭と一体に。居間は東側全面がガラス。2階書斎に腰を下ろすと、横スリット状の窓から、南棟の屋根越しに公園の緑が見える。離れの客間は、高さ700㎜×幅830㎜角の突き出し窓からイロハモミジを望むという具合だ。


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