特集/ケーススタディ

街への視線

 この敷地の選択理由に、道路向こう側の公園があるという。相互の見え方も検討して、住宅のボリュームは設計された。また、子どもたちは2カ所のアプローチから駆け出していき、わが家の庭のように使っているそうだ。
 食堂に座って大きく開け放たれた中庭を見ていると、絶妙な棟のずらし方、距離の取り方がそれを可能にしていることがわかる。外からのぞき込まれず、同時に完全に閉じていないことで得られる気持ちよさなのである。ここに敷き詰められた砕石は、どこまでも外につながっていくイメージだという。このあたりは建ぺい率が40%だから、必然的に敷地の60%は外部となる。どのような家の連なりがよい街をつくるのか、それが問われている。
「都市に対するずれを意識する」という新関さんの言葉が印象的だ。部屋と部屋だけでなく、街へも連続していく。地下を通すことで、南棟は完全な分棟になった。建築家の強い意志が棟をずらして隙間をつくり、そこを通る風はさわやかに食堂を吹き抜けていった。
 最後に、この家の住まい方に触れておこう。育ち盛りの子どもが3人、竣工して3年半とは信じられないほど美しい。住まい手に愛される家は幸せである。


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