

- 山名 出入り口が室内側に斜めに入っているのも、インテリアとして効いていますね。壁に出っ張りをつけてストレートにしなかったのは、シンプルに見えすぎるのを嫌ったためでしょうか。
- 竹口 そうですね。もともと出入り口は外にとび出ていたのですが、室内に引っ込めました。こうしたのは、長大な壁が白一色でできるのは単調だと考えたからです。壁の途中に出っ張りがあることで、空間的な流れが発生していると思います。たとえば、川の中に岩があるとその両側に小さな流れや渦ができて、何もないときよりもかえって流れが感じられますよね。
- 山名 確かに、向こうが見えなくなることや、壁に映る人の影の距離感が変わることで奥行きを感じ、空気が滑っていくような感覚があります。
- 山本 壁をずらしてスリットをあけ、そこに出入り口扉を設けるという案もありました。ハイサイドライトを拡張したように、もっと出入り口を構造と一体化して純化させた案です。竹口とはかなり議論したところですね。
- 竹口 今回は出入り口部分で壁をずらそうとすると、そのためだけに余分な柱や梁が必要となるので、結局見送りました。
- 山名 南東の庭はどうイメージされていましたか。
- 夫 芝生があってそこで子どもと過ごす、というイメージを勝手に抱いていました。井戸も残せるのであれば残そうと。庭についてもいくつか提案を受けて、最終的に選んだものが、ある程度まとまった広さをもった案です。
- 竹口 周辺からは見えない庭を、建物を利用してつくっています。
- 山本 以前に住まわれていた実家では、表の通りからは見えない位置に庭があり、おふたりのイメージの根底にはその庭があるだろうなと思いました。ただ、視線から守られつつも、外と内を自由に出たり入ったりする生活もイメージされていることは土間の要望からもわかりました。
- 竹口 お祭りのときには10人くらい家に呼んで集まりたいということや、土間をつくってほしいということを言われていましたね。
- 夫 以前に住んでいた実家には広い土間があって、なにかと便利だったのです。
- 山本 細長いプランで土間を広くとると分断されてしまうので、土間を2カ所に分けて、土間に隣接する部屋を土間が邪魔しないようにと考えました。部屋のフローリングと土間のコンクリートとはフラットに納めて連続させています。たとえば京都の町家のダイドコは土間で、親しい人は靴を履いたまま入っていける。外との境界線が家の中にぐっと入る感覚ですね。
- 妻 この家は外が閉じているので最初は人に近寄られなかったのですが、親しくなれば家の中の土間にも入ってきます。今では子どもが近所の子と遊ぶようになって、友だちが家の外と中を頻繁に行き来しています。用もないのにトイレを借りに来る子もいますし(笑)。
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