

- 山名 設計過程で生じるスケールや形態の操作については、施主にどのように説明されていったのですか。
- 竹口 基本的には設計図書と模型で説明します。設計の概念は初めから明快なわけではありませんが、考えがまとまるごとになるべくくわしく説明しました。模型はたくさんつくりますね。最初の3案は100分の1でつくりますし、設計が進むと30分の1や20分の1もつくってインテリアまで検討します。
- 夫 打ち合わせに行くたびに模型が増えていましたね。概念的な話は半分以上はわからないのですが(笑)、とても刺激的でおもしろかったですよ。
- 山名 3次元CADやCGはどれほど活用していますか。
- 竹口 このプロジェクトではまだそれほど使っていませんでしたが、最近ではより3次元的な歪みをもった空間に興味があるので、コンピュータなしには、スタディしにくくなっています。これまでは型枠を組むのも、鉄骨工事も直線をもとに考えられてきましたので、幾何学形態のほうが建築施工がしやすかったのですが、構造計算ではコンピュータ化が進んで苦労せずに力の流れが解析できるようになりましたから、これからはさまざまな歪みをもった空間を、合理的に施工することができるようになるのではないかと期待しています。また現在はサスティナブルに建物をつくることも重要ですが、コンピュータを利用して得られる構造的な合理性や、施工上の利便性はサスティナブルに寄与する重要な要素だと思います。
- 山本 歪みをもった空間にしたいとき、矩形の空間とのあいだで、どれほどで定着させるかはいつも考えるところです。よく用いるのは45度の角度に振ったラインです。こうすると、矩形に対してインパクトがある。最小限の操作といえますが、つくりやすいわりにはコストがかかりません。自邸でもそうでしたが、斜めの要素を持ち込むことで、狭い空間でも感覚的に広く見えるのです。
- 山名 ねじれた空間にはどのようなことを求めているのでしょうか。
- 竹口 矩形の空間にはない力、空間の形の効果を試したいということがあります。人は誰しも、見たことのない空間を求める欲望があると思います。坂やカーブがあり、さまざまな建物が連続する迷路のような街を訪れるとワクワクしますよね。ギリシャのサントリーニ島やイタリアの中世都市などは、街が立体的に連続していて期待感が高まります。とくにスケールの小さな住宅では、ねじれた空間の中に、さらに家具や出入り口が点在することで、人が一歩動くと見える風景が大きく変化するという効果が大きいと思います。施主にとっては自由に空間をつくれる大きなチャンスですから、やはり住んでいてワクワクする空間を提案したいです。
- 山名 遊ぶというと語弊があるかもしれませんが、おふたりは設計過程を通じて真剣に遊んで取り組まれているので、こうした抑揚のある形が生まれているのでしょうね。
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