- 山名 建物が折れ曲がった部分では、光がグラデーション状に室内に入ることを意識されているようですが、こうした効果はあらかじめスタディされていたのですか。
- 山本 まず寒いのがいやということで、開口部を最小限にすることを検討しました。1階にはほとんど開口部がありません。
- 竹口 その代わり、建物を折り曲げた軸線が真南に一致することから、勾配の異なる屋根の裂け目部分にハイサイドライトを設けました。そして、ここから入る自然光を最大限利用するために、壁面や天井面で光をリバウンドさせて室内に取り込むことを考えました。ハイサイドライトの下部に接する屋根面は室内側にのばして庇のようにし、壁や天井と合わせて光の筒になるようにしました。こうすることで、少ないガラス面でも内部全体に自然光が降り注ぐ効果が得られています。直方体の建物に大きなガラス面を設けたときと違って、夏の直射日光が室内に差し込まないので、やはり室内の温度変化を少なくするのに効果的であると同時に、小さいガラスはコストの点でも有利です。
- 山本 一方で、通風は南北端の壁に小さな引き違い窓を設けることで確保しています。また街路への玄関、前庭への勝手口、中庭への出入り口という3つの扉も通風口になっていて、中間期は扉をあけておけば、家中を風が通り抜けます。
- 山名 通風口となる扉部分にしてもハイサイドライトの部分にしても、建物が折れている個所が室内で強調されていないことが少し不思議です。たとえばドイツの近代建築であれば、ハイサイドライトの庇のような部分は切り落としてミニマルに納められるでしょうから。
- 竹口 折れ曲がった空間から来る奥行きは感じたかったのですが、あまりに幾何学的に明快な操作というのも、毎日を過ごす居住空間には適していないと思いました。ただ、庇のように付加した部分が、意図的なものとしてインテリアから突出することも避けたかったので、ここでは先端にかけてテーパーをとることで庇の室内側の木口が細く見えるようにしています。
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