特集/座談会+ケーススタディ

建物とインテリアを重ね合わせる

山名 天井高は高すぎず気持ちがいいものですし、出入り口部分や造り付けの収納、本棚、キッチンブースの壁の高さが2mに統一されているのも、ちょうどいいスケール感だと思います。これらのスケールはどのように決まったのですか。
竹口 LDKの天井高は最も高いところで5m弱あります。子ども室が重なって2層になる建物北端と、寝室のある南端に挟まれた、1.5層分の高さの部分です。南北端の諸室の天井高を2m程度の親密なスケールに抑える一方で、そことの対比で開放感が得られるよう綿密に調整しました。このとき、雨水を排する屋根勾配や、屋根のあいだのハイサイドライト、そして構造体がいっせいに決まった格好です。一方LDKのなかでも、出入り口部分だけは、高さを2mに設定して、本棚やキッチンブースなど家具的要素の高さもそれにしました。
山名 構造の架構は、125㎜のHフレームをまわしたものですよね。シンプルでありながら、内部では豊かな空間が生まれています。
竹口 柱を約2m間隔と鳥かごのように密に配すること、また三角形のハイサイドライトから壁内に力を伝えるブレース材を入れることで屋根と壁が一体となって全体の剛性が確保されて、ねじれたプランであっても無駄のないスリムな構造とすることができました。さらに柱梁の接合部は一部現場溶接とすることで、屋根も壁も仕上がりを薄く抑えています。構造体がスレンダーになると、建築は人間的なスケールになるものです。手すり壁や出入り口枠の見付け寸法を、なるべく壁の厚みに近づけているのも、構造スケールを人間スケールに近づける工夫です。
山名 壁や天井面、造り付けの家具類も仕上げはボード張りにペンキで統一していて、構造体とインテリアを区別していませんね。
竹口 構造のスケールとインテリアのスケールは、やはり別のレベルのものだとは思いますが、区別したり統一したりというより、重ね合わせることを意識しています。構造とインテリアは製作の精度が異なるので齟齬が出やすいものです。そこで、H鋼に木摺りのような厚さ10㎜程度の6つ割り材をビス留めしてからボードを張りました。木材のきめ細かなスケールで鉄骨の不陸を吸収し、家具のような平滑な面を出したのです。また木板を張ることは鉄骨の熱橋対策にもなり、壁や屋根面の断熱性能を高めることにもつながります。ちなみに断熱は、外壁の厚さ25㎜の断熱材付きサイディングと、構造材のあいだに充塡した高性能グラスウールと二重にすることで、北海道で求められる省エネ基準のレベルになっています。施主のおふたりに見ていただいた自邸でもそうなのですが、断熱性能を高めて室内の温度変化を少なくすることで、天井高を高く確保しても心地よい環境が得られます。
 床暖房をリビングの一部とキッチンに入れていただいて、冬はガスファンヒーターを併用することで十分にあたたかいと感じます。夏も、リビングのエアコン1台で家全体が快適ですよ。
山名 外壁や屋根をガルバリウム鋼板にしたのはどうしてですか。
 竹口さん山本さんの自邸もそうでしたし、鋼板の色は黒と銀の提案を受けましたが、銀のほうが軽いと思ったからです。
竹口 銀というよりも、グレーに近いですね。空の色が壁にやわらかく映り込んでいると思います。当初は、ガルバリウム鋼板の外壁の上にさらに焼き杉を張ってカバーする案を出していました。くびれた町家をうねった焼き杉が覆うのはいいなと思いまして。
 将来、すごく気が向いたらしてみましょう(笑)。
山名 屋根の雨を受ける樋はどうしていますか。
竹口 シンプルな軒樋ですが、外壁と同じガリバリウム鋼板をV字型に折り曲げて目立たないものにしています。


>> 「HOUSE TWISTED」のアクソノメトリックを見る

  • 前へ
  • 2/5
  • →
Movie“HOUSE TWISTED”

TOTO通信WEB版が新しくなりました
リニューアルページはこちら