「その先に何を見るか」でどうやら建築は変わるものらしい。しかし、今や何を見るかはもはや問題ではないようだ。見るべきものがないときが問われている。五十嵐淳さんは、「外の景色をあてにできない」と自分で封じてしまった。外の景色は永遠ではないからだ、と。
あらためて五十嵐さん設計の住宅「光の矩形」を見る。ここにあるのは何を見ようかというプランではない。何を見せるかを問い詰めている。何もないときの答え。設計の力が問われている。追い詰められたとき、いや、わざと自分を追い詰めるとき、つくり手は、また、ひとつ建築表現の次元を越えていくものらしい。