編集ノート

鞆の浦からの発信

 宮森洋一郎さん設計の「鞆の浦のアトリエ」のお施主さんには、偶然東京で会ったことがあると思い出した。小林正人さん。20年も前のことだけれど、すでに時代の注目を集めていたアーティスト。東京銀座の鎌倉画廊と佐谷画廊の個展でのことだ。その後、ベルギーに招かれて暮らしていたという。
 やわらかな光の空間はまさにアトリエ。何もない大きな空間、その壁には制作中の作品が掛かるだけ。いっさいの装飾を排した空間は、美術家・小林正人さんが意識においているだろう巨大な美術館空間と重なって見える。鞆の浦という地球の一点にあって、小林さんはまさに世界を視野に置いて仕事をしている。アーティストの幸せを垣間見た気がした。そこにある建築もまた場所性を超えて生きているように見えた。


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