澄んだ湯にどっぷり浸かれるバスタブ

 次に、世界一高いホテル「パークハイアット上海」を取材した。標準的な客室の広さは約60㎡、宿泊費は1泊5000元(日本円で約7万5000円)からというから、グレードも世界最高級。内装設計を担当したのは、ニューヨークのデザイナー、トニー・チー氏。森ビル建築設計グループの青木謙一さんによれば、「設計コンセプトはチャイニーズ・モダン。古きよき中国の匂いを残しながら、現代的なデザインを取り入れました」とのこと。
 撮影した客室は81階のスタンダードルーム。蛇行する黄浦江(こうほこう)が望める眺めのよいベッドルームもさすがの上質さだが、注目は日本式のバスルーム。防水パンを採用して洗い場を確保し、お湯に浸かれるバスタブを設置した。しかも、かけ流し温泉のようにお湯を勢いよくオーバーフローさせられるよう、浴槽のリムの一部を欠き取るという気の配りよう。
 さらに、頭上から勢いよくお湯が出るレインシャワーも標準装備。「レインシャワーは無理をお願いして、途中で急遽大きさを2倍に変更したんですが、迅速に対応していただきました。お湯がピタッと止まるのを確認したときは、さすがTOTOさんだと思いましたね」と設備設計グループの渡邊泰博さんは笑う。
 こうした設備の充実もさることながら、森ビルが最も力を入れたのは「いかに蛇口から出る水をきれいにするか」だったとお三方は口を揃える。確かに、取材スタッフが宿泊したホテルでもバスタブにお湯をためると濁って、蛇口から出る水も臭いがする。洗面台には歯磨き用のミネラルウォーターが備わっていた。こうした中国の現状を打開すべく、ホテルでは海水から飲料水を製造できるRO逆浸透膜システム()を採用し、ホテル内の蛇口から出る水は飲料に耐えるレベルを達成したとのこと。
 いものホーロー浴槽にたたえられた水は光の加減でみごとな水色に見える。「あれを見たときはホッとしましたね」「浴槽に浸かってお湯が鼻先まで来てもまったく臭わない」と、一同、出来ばえに満足げだった。

(注)RO逆浸透膜システム=海水を真水に変える装置として米国で開発され、NASAをはじめ、都市の飲料水などに利用されている最先端の浄水方式。水の分子だけを通し、不純物は通さない0.0001ミクロンの細孔をもつ人工薄膜により、従来方式では不可能だった有害な化学性物質を継続的に90~99%除去し、安心して飲める水にする。

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