特集5/対談

断熱材壁式構造の可能性

―― 期間とコストはどれくらいかかりましたか。
藤江 設備のない寝室用のボックスの組み立てで、3日程度でした。設備が必要な水まわりのボックスは、防水用にフレームなどが必要なので5日ほどかかりました。その前に、ボックスの下は木でベースを組み、床暖房を入れているので、全部で2カ月ぐらいですね。コストは、台所のリフォームや浴室の新設、オール電化も含めて、650万円ほどでした。断熱材自体は、不燃などの性能を付加しなければそれほど高額ではありません。1枚数千円程度です。
―― お父さまは快適になって喜ばれたでしょうね。
須永 なにを聞いても「まあそうだな」としか言わないので、どうでしょうね(笑)。でも、足が冷たくなくなりました。「寒くない?」と聞くと「大丈夫だ」と。確かに触ってみると普通の温度に戻ったので、それはよかったなと思っています。
藤江 不燃材料認定の断熱材がそれ自体で自立し、断熱性能の高いシェルターが出来上がるので、今回のようにある程度の空間があれば、熱環境のよくない建築の中でも快適な生活スペースが得られます。もちろん光熱費の削減といった利点も大きいです。
須永 加工はカッターで簡単に切ることができますし、プラモデルの感覚で組み立てられますよね。
藤江 表面に張ってある紙が意外と丈夫で、大工さんは小さなノコギリを使っていましたね。開口部の一部は現場で寸法を合わせてカットしてもらいましたが、あっという間でした。やわらかい木という感覚ですので、DIY商品にもなると思います。
須永 災害時に体育館が避難場所になる場合などにも向いているでしょう。床も天井材と同じ断熱材でつくり、その上に壁と天井を組み立てればいい。ひとつ1時間もあればできてしまいます。このボックスは遮音性もあります。ここでも、表の人通りや電車の音が気にならない程度になります。出入り口も同じ材料ではめ込み戸にすれば、プライバシーも確保できるはずです。
藤江
 再利用して転用もできますから、賃貸スペースや建物を使いながら更新するケース、利用期間が限定されているスペースにも向いています。さまざまな場面や空間に展開できるはずなので、このプロジェクトは続けて発展させたいですね。
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