特集5/対談

木が熱橋になる

藤江 当初は、強度を保つために木の格子を組むことなども考えたのですが、その木の部分が断熱性能的には熱橋になってしまうことを知り、断熱材だけでボックスができないかと試行錯誤しました。
須永 木は熱伝導率の数値では、0.10~0.15W/mK程度です。それに対して断熱材は、ここで使っている高性能フェノールフォームで0.02W/mKです。断熱材の種類やグレードによって数値は違うのですが、木と断熱材とではひと桁の違いがあります。サーモカメラで撮った熱画像を見ますと、木の部分は色が変わり、はっきりとわかります。木は断熱性能が悪くはないのですが、まわりの断熱性能が高くなってくると木の部分から逃げる熱が多くなりますから、熱橋のように見えます。
藤江 設計者はビジュアルに弱いですからね(笑)。熱画像で状況を目の当たりにしたときに、どうにかしないといけないと思いました。
―― 部材の構成はどのようになっていますか。
藤江 パネルは高性能フェノールフォーム断熱材を3枚重ねた3層構成になっています。ここでは、真ん中にアルミ箔を両面に張った耐火性のあるタイプを、不燃紙を張ったタイプで両側からサンドイッチしています。不燃紙は厚さ1mmほどのものが片側に張られていますから、それが表側に来るように接着剤で張り合わせました。部材の製作まではメーカーの工場で行い、搬入してもらいました。
須永 厚さは、真ん中が35mmで両サイドに25mm、両サイドには1mmずつ不燃紙の厚みがあるので合計87mmですね。断熱性能は発泡ポリスチレン約150mmに相当します。3枚をずらして実(さね)加工のようにしています。
藤江 1枚のサイズは、すべて450mm幅で統一しています。それぞれのボックスが梁下で納まるように設定しました。一番長いサイズが天井材の2700mmですね。もともとはセルフビルドを想定していたので、ふたり程度で順々に差し込んで組み立てられることを目指し、ハンドリングしやすいサイズで軽量にしようと考えました。
―― 試作はされたのですか。
藤江 とくにコーナー部分を検証したかったので、畳1畳分の原寸大モックアップをつくりました。壁は、四隅に150mm角のコーナー材を立て、そのあいだにパネルをはめ込む形式にしています。3層構成の部材が出会うコーナーでは、どのように納めるかという検証をしました。取り合いを4種類試したなかから、見え方が最もきれいで強そうということで最終形が決定しました。出隅で表にくる1層分を斜めにカットして、留めにしています。工事は結局、時期的な理由で大工さんにお願いすることになりましたが、ひとりで問題なく組み立てていました。部材同士には接着剤を塗りながらはめています。
―― 施工のときには動かしながら微調整できるのですか。
藤江 接着剤はエポキシ系なので、固まるまでの1日程度は動かせます。調整する余地として、パネル同士には目地を入れることにしました。仕上げは、不燃紙そのままの表情でもプリミティブな質感だったので、はじめは仕上げなしで考えていました。しかし目地が目立ってしまったため、意匠的に別の仕上げが必要と思い、内装はクロス、外側は塗装を施しています。
  • 前へ
  • 3/4
  • →
  • Drawing
  • Profile
  • Data

TOTO通信WEB版が新しくなりました
リニューアルページはこちら