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吉阪隆正の迷宮
 
吉阪隆正の迷宮
2刷
編集=2004吉阪隆正展実行委員会
発行年月=2005年12月
体裁=菊判(218×152mm)、並製、344頁
ISBN=978-4-88706-265-8

デザイン=春井裕

定価1,980円(本体1,800円+税10%)
巨大な思想をもったモダニズムの建築家・吉阪隆正
吉阪隆正(1917-1980)は、ル・コルビュジエの3人の日本人の弟子(前川國男、坂倉準三、吉阪隆正)のひとりとして、モダニズムの思想を日本に紹介し実践した建築家です。吉阪の存在が戦後日本の建築史の中でも際立っているのは、彼が建築家としてだけでなく、優れた教育者としてまた活動家として、ことばと行動によっその思想を示したことにあります。垂直方向には住居論から都市の全体計画まで、水平方向にはアジアはもちろんヨーロッパ、南米、アフリカまで、壮大なスケールの行動力と強烈なキャラクターで学生や弟子を導いていった吉阪隆正。その教えは今も弟子の建築家たち(U研究室、チームZOOなど)を中心に受け継がれているとともに、吉阪を直接知らない若い世代の間にも再評価の動きが高まっています。

吉阪隆正の生き方と営為を伝える、45人の証言

本書は、没後四半世紀を経て開催された回顧展「2004吉阪隆正展」と、これに併催された記念シンポジウム・夜話などの講演録をまとめた本です。
◇2004吉阪隆正展……2004年に建築学会で開催された回顧展の記録。18校百数十名の学生による巨大な油土模型が圧巻。
◇紙芝居:吉阪隆正ことばとかたち……ル・コルビュジエとの出会いや空間や住居に対する考え方などを吉阪が書いた文章で綴っています。
◇シンポジウム……建築家・伊東豊雄と歴史家・五十嵐太郎、倉方俊輔が、吉阪の実践と教えが現代にどのように生きているかを検証します。
◇「夜話」……吉阪の子息や吉阪の教えを受けた弟子たち、交流のあった建築家、歴史家たちが、自邸での生活ぶり、大学での教育活動、登山家・冒険家としての一面など、さまざまな視点から吉阪の人間像を語り、その生の姿を浮き彫りにしています。
◇次世代からのメッセージ……妹島和世、塚本由晴、小嶋一浩など現在活躍している若手の建築家たちが、吉阪の作品と思想から何をメッセージとして受け取ったかを語っています。
◇吉阪隆正のダイアグラム……吉阪が描いたさまざまなスケッチによって、その世界観をかいま見ることができます。
◇吉阪隆正+U研究室の建築……「アテネ・フランセ」「ヴェネチア・ビエンナーレ日本館」「大学セミナー・ハウス」「吉阪自邸」など代表作13点が初めてカラー写真で紹介されています。

現代建築の広い視野の中で吉阪像を伝え継ぐこと

この本の目的は、強い個性ゆえにキワモノとして見られがちな吉阪像を、特に建築を志す若い世代に対して、ありのままの姿で伝えることにあります。建築の「軽さ」や「透明感」が評価される一方で何となく行き場のない閉塞感も漂っているこの時代に、強靭な意志と軽やかなフットワークで状況を切り開いていく吉阪の姿を、今に生きるメッセージとして受け取っていただければと願っています。
吉阪隆正(1917-1980)の生涯
1917年生まれ。33年ジュネーブ・エコール・アンテルナショナル卒業。80年63歳で死去。

●教育者・組織人として
41年早稲田大学理工学部建築学科卒業後、教務補助として大学に残り、59年教授となる。日本建築学会会長、生活学会会長を歴任。
●建築家として
1950年~52年フランス政府給費留学生として渡仏、ル・コルビュジエのアトリエに勤務。54年吉阪研究室(64年U研究室と改称)を創設。「ヴェネチア・ビエンナーレ日本館」(1957年)、「呉羽中学校」、「アテネ・フランセ」(1960年)、「大学セミナー・ハウス」(1963年)などを設計する。63年「アテネ・フランセ」で日本建築学会賞受賞。
●思想家として
考現学の創始者・今和次郎に師事し、農村、都市、地域への提案を展開。『住居学汎論』(相模書房)など多数の著作があり、『吉阪隆正全集』全17巻(勁草書房)としてまとめられている他、ル・コルビュジエの著作『建築をめざして』(鹿島出版会)などの翻訳もおこなった。
●冒険家として
日本山岳会理事を務め、赤道アフリカ横断とキリマンジャロ登頂、早大アラスカ・マッキンレー遠征隊隊長、そしてヒマラヤK2遠征を組織するアルピニストであり、地球をその足で駆け巡り、人と人をつなぐ、ことばとかたち、生活とかたちを語りつづけた。
コンテンツ

◆はじめに:波紋のように「伝わる」ことを願って――鈴木 恂
◆紙芝居:吉阪隆正ことばとかたち――重村 力
◆ シンポジウム:21世紀の吉阪隆正――伊東豊雄、五十嵐太郎、倉方俊輔、内藤廣
◆ 2004年吉阪隆正展「頭と手」
◆ 夜話:聞き手=倉方俊輔
第一夜=1950年代の吉阪隆正――菊竹清訓、鈴木 恂
第二夜=自邸の四半世紀――吉阪正邦、遠藤勝勧、三宅豊彦
第三夜=ル・コルビュジエの三人の弟子たち――藤木忠善、鬼頭梓、松隈洋
第四夜=地球を駆ける――今村俊輔、小倉董子、望月真一、郭中端
第五夜=U研究室の方法――樋口裕康、植田実、田中彌壽雄、富田玲子
第六夜=1970年代の経験――塩脇裕、内田文雄、齋藤祐子
第七夜=大学人として――穂積信夫、戸沼幸市、尾島俊雄、後藤春彦
第八夜=まちつくりの方法論――地井昭夫、重村 力、藤井敏信、原 昭夫
第九夜=都市計画への展開――関 研二、田中滋夫、濱田甚三郎
第十夜=吉阪隆正の遺したもの――川添 登、藤森照信
◆ 吉阪隆正のダイアグラム
◆ 次世代からのメッセージ
石山修武、難波和彦、手塚貴晴、塚本由晴、妹島和世、小嶋一浩、古谷誠章、西沢大良、北山 恒、内藤 廣
◆ カラーフォト:吉阪隆正+U研究室の建築――写真・構成=北田英治
「吉阪自邸」「浦邸」「ヴェネチア・ビエンナーレ日本館」「ヴィラ・クゥクゥ」「海星学園」「呉羽中学校」「日仏会館」「江津市庁舎」「アテネ・フランセ」「天竜川治水記念碑」「生駒山宇宙科学館」「山・山小屋」「大学セミナー・ハウス」
◆ 吉阪隆正年譜

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著者=ジョン・ピーター
翻訳者=小川次郎、小山光、繁昌朗

CDおよび本文収録インタビュー=アルヴァ・アアルト、マルセル・ブロイヤー、ヴァルター・グロピウス、フィリップ・ジョンソン、ルイス・カーン、ル・コルビュジエ、ルードヴィッヒ・ミース・ファン・デル・ローエ、ピエール・ルイジ・ネルヴィ、リチャード・ノイトラ、オスカー・ニーマイヤー、J.J.P.アウト、イオ・ミン・ペイ、エーロ・サーリネン、ホセ・ルイ・セルト、丹下健三、フランク・ロイド・ライト

本文収録インタヴュー=ピエトロ・ベルーシ、カール・コッチ、マルク・ソージェイ、マックス・ビル、前川國男、ポール・シュワイカー、オズワルド・アルトゥール・ブラッケ、エリオット・ノイエス、ルドルフ・シュタイガー、ゴードン・バンシャフト、ファン・オゴールマン、エドワード・デュレル・ストーン、フェリックス・キャンデラ、エンリコ・ペレスッティ、マルティン・ヴェガス、エドアルド・カタラーノ、ジオ・ポンティ、カルロス・ラウル・ヴィジャヌエヴァ、マリオ・キャンピ、L.L.ラドー、ポール・ワイドリンガー、エドガルド・コンティーニ、ラルフ・ラプソン、フィリップ・ウィルJr.、ヴィレム・デュドック、アントニン・レーモンド、ウィリアム・ワースター、R.バックミンスター・フラー、アフォンソ・エドアルド・ヘイジー、ミノル・ヤマサキ、ホセ・ミゲル・ガリア、マルセロ・ロベルト、吉村順三、ブルース・ガフ、エルネスト・ロジャース、チャールズ・グッドマン、アルフレッド・ロート、ヴィクター・グルーエン、ポール・ルドルフ、ヘルムート・ヘントリッヒ、マリオ・サルヴァドーリ、アルネ・ヤコブセン、トマス・サナブリア
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編者=OJ会