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ギャラリー・間 100回展 この先の建築
ARCHITECTURE OF TOMORROW
2003 05.24-07.26
B-5  Report 2002.10.02
「編集という視点から」
石堂威/小巻哲/田尻裕彦/寺田真理子/馬場正尊
レポーター:川上典李子
今回のシンポジウム「この先の建築 ARCHITECTURE OF TOMORROW」のナビゲーターを務める5氏が一堂に揃ったBプログラム最終回は、今回のシンポジウムの印象からスタートした。
 
会場風景
会場風景
田尻裕彦氏
田尻裕彦氏
石堂威氏
石堂威氏

撮影=ナカサ・アンド・パートナーズ  

「世代を超えて議論ができる場が誕生するのが重要」と言う田尻裕彦氏、「5世代の議論は無謀だと感じたが、やってよかったと思う面があった。若い建築家もがんばったと思う」と言う石堂威氏、「今回のシンポジウムを通してさまざまなことを考えた。例えばジャーナリズムと編集の関係など……」と言う小巻哲氏、「建築と都市の関係、建築と社会の関係に興味をもってやってきた」という寺田真理子氏、「自分の父より上の世代に問い掛けるのは難しい。若い世代の出席者とどう話をするかと話し合ったが、そのように考えることだけでも意味があるのかもしれない」という馬場正尊氏。

まず話題となったのは、「議論の場を雑誌がつくる」ということについて。これは、かつてデザイン雑誌の編集部に所属していた私にとっても興味のある議論だった。
馬場氏は、寺田氏が担当した『SD』巻末の「海外情報」のページが、若い建築家や学生たちにディスカションの場所を提供していたことを挙げる。その寺田氏が口にした「議論はエネルギーになった」という言葉が印象的だ。さらに「雑誌の表面に出てくる記事だけでなく、やりとりの場をつくるのが編集者」と田尻氏。逆に、それをせずして編集者だとは決して言えない、と私は強く思う。

各氏の話に見え隠れする時代背景が幅広い。
たとえば田尻氏は1960年代、『建築文化』で、当時の近代的な都市計画へのアンチテーゼを提示する記事を企画した。その記事を契機として、当時の『朝日ジャーナル』も都市計画の問題を巻頭で取り上げるなどの動きがあったという

今という時代の中では、建築雑誌は何を対象とし、何をすべきなのだろうか。
建築雑誌はかつて建築と都市とを同じ視点で捉えていたが、やがて各氏の作品が雑誌の主体となっていく。
「30年ほど前の建築雑誌は雑誌編集のなかでは未文化のもので、やがて建築雑誌のスタイルが確立される」と石堂氏。
「それとともに作品を紹介することにエネルギーが注がれるようになる。しかし、最近、都市という問題が重要だと思っている。」「編集者も苦労しているが、都市の問題に踏み入れられない。その問題は大きい。」

「建築家は都市の問題に無責任になってはいけない。都市の問題は建築だけではないということを理解し、その思考も持続していかなければ」と述べるのは小巻氏だ。

都市に関しては私も思うことがある。最近街を見て思うのは、都市開発がディペロッパー先導型でなされており、建築家の顔がなかなか見えてこないということである。

建築家はすでに、個々の作品に閉じこもってしまったかのようにも見える。もちろんここには社会の体制や経済システムといった複雑な問題があるのだが、再度、あえて大上段でも、「都市」とは何かを大きな声で語ってもいいのではないだろうか。いつの間にか都市を語ることは不可能だと決められてしまっているようだが、それは、本当に不可能なのだろうか。

馬場氏は隈研吾氏が以前述べた言葉「社会の大きな物事の決定に建築家は関わっていないのではないか」を強く感じていたそうだ。広告代理店に勤務していた際に世界都市博覧会の事業に関わっていた馬場氏は、新たにつくられる都市のインフラストラクチャーを考える作業に建築家が含まれていないことに愕然としたという。氏が立ち上げた雑誌『A』にはその際に感じたことが反映されているようで、東京をテーマとする特集も組まれている。石原都知事にインタビューを申し込み、「インタビューという名のプレゼンテーションをした」というような積極的な活動も行っている。
「『A』は自分を好きな所に連れていってくれる乗り物。メディアは使いよう。」馬場氏にとって雑誌は、アクティヴィティのための手段でもあるようだ。

雑誌の専門性と一般性についての話でも盛り上がった。
5氏からは、あくまで専門誌としての立場を貫くべき、ということが改めて示されたが、その際においても、都市的な視点が必要である、という意見が口々に出されたのである。Bプログラム第3回のゲスト、松村秀一氏が述べた「"南"と"北"の違いはロジスティックとマネジメント」を引用したのは石堂氏。「今後はマネジメントを考えた建築家の時代であり、建築家がさらに都市とつながっていく時代」と添えた。

「専門誌と一般誌の間に位置する雑誌『カーサ ブルータス』が支持され、専門誌が売れない建築編集者受難の時代になっている」という話の一方で、それだからこそ「現在は建築の雑誌が面白い時期にある」という意見もあった。「建築の世界からも読者の側からも、その立場が揺さぶられている」。「建築に限らず広く居住環境の問題に移ってきている」と小巻氏。

都市、そして建築を巡る新しいマネジメントがますます重要になる時代、現在は「そのためにも編集者が受け身であってはいけない」(馬場氏)時代となっているのだ。さらには、そうした編集者を交えながら、建築家もさらに現状に対する意見を、建築を巡る背景への意見を、述べる活動を行っていくことができるのだろう。

小巻哲氏
寺田真理子氏
寺田真理子氏
馬場正尊氏
馬場正尊氏
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