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石山修武氏 |
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岸和郎氏 |
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3時間に及ぶシンポジウムが終わったあとも、僕の頭の中をぐるぐる回り続けていたのは、リノベーションという言葉だった。その可能性と閉塞感が同居した響きが現在の僕たちの状況なのだろうか?
「これからの建築に対する主体的な意思を聞きたい」という、ナビゲーター田尻氏による問い掛けによってシンポジウムは始まった。「表層の移ろいに身を委ねつつ、戦略もないまま戦術的に処世しようとしているように感じられる」現状に対する、僕たち自身のもどかしさを代弁した問いだといえる。
それに答えて各人が自分のスタンスを、初めは口頭で、次にスライドを使って表明していく。
太田氏は、素材、省エネ、コンパクトシティ、という3つの大きなテーマを自分に課す。実作が少ないゆえに具体的な提案にまでは至っていないが、若さゆえの志を感じる。
続く阿部氏は、成長型から低成長型へのソフトランディングを根底に据え、商店街の中での結婚式のプロデュースや、熊本アートポリスでの住民を巻き込んだ身近な活動を通して、建築家の仕事を拡張する可能性を模索する。
青木氏は、機能からの建築は面白くない、むしろリノベーションに気持ちよさを感じる、と言い、リノベーション的なものを新築の建築にも展開しようとする。
岸氏は、出口がない今の状況に対して、活動のフィールドを建築というものにあえて限定し、近代建築の形式を少しだけ読み替えることに可能性を見いだす。
石山氏は、もはや建築は、建築家の側からは変えられない、クライアント、マーケットという他者を変えていかなければならない、と説く。具体的には、今まで近代建築が相手にしてこなかった子供や弱者のための建築を模索していくと言う。 |
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