ケーススタディ2

和風の要素を、
空間の襞に

作品/「如風庵」
設計/光嶋裕介

「如風庵」は、一見すると和風ではない姿形をしているが、部分を見ると土壁、漆喰、竹木舞などの和風の要素でつくられている。見慣れてはいないが、どこかなつかしい建築だ。それを生み出した、光嶋裕介さんの創造の原点は何か。

取材・文/伊藤公文
写真/傍島利浩

不可思議の
集合体

 神戸・六甲山の中腹にある住宅「如風(じょふう)庵」の前に立つ。建築家・光嶋裕介さんにとって2作目の住宅である。
 南傾斜の敷地は極端に南北に長く、接道しているのは南側のみ。その南側正面は幅5m余り、高さは11m余り。まるで塔のようだ。
 塔の姿は一様ではない。いかにもお屋敷然とした既存の石垣。その中央を割り込んだ入り口の正面には目隠しとなる版築の壁。最下層の地下1階は差し掛けの屋根が低くかかる平入りのポーチ。外壁はその上の1階を含めて土壁搔き落しの粗面。一方、最上層の2階は大きくせり出す白い漆喰の平滑な箱。その上に切妻屋根。全体に左(西)側の壁面は直立し、右(東)側の壁面は傾いている。
 形、色彩、質感、どれをとっても各層が固有のありようを主張している。部分的には対称性が認められ、静的だが、全体としては非対称で動的。慣習的な趣が強いと思えば、そこからの逸脱もまた強い。和風とみなすこともできるが、そうとも断定しがたい。全体として見たことはないがなつかしい。そう感じさせる不可思議な集合体だ。


>> 「如風庵」の平面図を見る
>> 「如風庵」の南北断面図を見る
>> 「如風庵」の東西断面図を見る

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