
スタイルのなかの
インテリジェンス
そのため、きわめて現実的に「必要だから使う」という考えが一貫している。町家というと、どうしても伝統的な町並みを形成している和風意匠を思い描いてしまうが、アトリエ・ワンが再解釈をしているのは、やはりあくまで町家の知恵なのだ。塚本さんいわく、「タイポロジー(類型)のなかに、数々のインテリジェンス(知恵)が使われない状態で封印されています。スタイルとしての認識を破って、なかにあるインテリジェンスを救出するべき」。そのインテリジェンスとは、たとえば先ほどの「動線貫通」や「視線貫通」などのように抽象的な概念だったり、あるいは格子や庭などのような具体的な要素だったりする。インテリジェンスを中核に据えれば、江戸から遠く時を経た現代においても、柔軟に町家をつくることができるとわかる。
町家を近世の都市住宅だと固定的にとらえてしまうと文化財になっていくしか道はないが、近世以来の都市住宅だととらえれば、過去のインテリジェンスを携えた現代の都市住宅にもなる。歴史を知ることは、知性を知ること。長い知の積層の延長に、現代がある。
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