ケーススタディ1

露地庭と
格子の
都市住宅

 さらに「ロジまちや」では、通り庭や坪庭の代わりに、名前のとおり露地庭を設けている。間口の狭い敷地ながら、片側に建築を寄せることによって、隣家との隙間に露地庭を確保。その露地庭側に窓を集中させ、そこから光や風を取り入れている。軀体は集成材のSE構法でできているため、ブレースのないすっきりとした開口部が、さらに庭の効果を高めている。この露地庭のおかげで、外観からはあまりイメージできないほど、室内は明るい空間になっていた。まさに「ロジまちや」。
 そして格子。格子は、一見したところでは町家から直接引用されたような意匠である。正直に言えば、取材前には和風意匠を少し織り交ぜてファサードをデザインしたのかとも思っていたが、話を聞いてみると、そうではなかった。格子は「町家の意匠」として導入されたのではなく、開きながらも閉じることができる「町家の知恵」として用いられたのであった。「日本建築に用いられてきたもののなかでも、格子と障子と畳は特別で、本当によくできています。効果的だから使うのであって、特別に和風の意匠を意識しているわけではありません」とアトリエ・ワン塚本由晴さん。確かに人通りの多い道と接した「ロジまちや」にとっては、最適なスクリーンである。
 格子や庭など、町家の設えを直接用いることもある。町家から知恵を学びとり、その知恵の再生産として時には町家の具象が発露することもまた、町家の再解釈にちがいない。


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