間伐材を活用する
システムの構築

 設計から施工までこなすHOPだが、単純に設計事務所と工務店が合体した組織ではない。発足前、石出さんは建築家や研究者らと「北海道新住宅産業開発協議会」を開いて、新しい工務店像を模索した。そのときにこだわったのが地元の木を使うことだった。
 石出さんが育った炭鉱の町では、坑道を保持する木材が大量に必要とされ、近隣の山の木は軒並み伐採された。そのため石出さんは「高校時代のアルバイトは植樹ばかり」だったそうだが、40年、50年を経たそれらの人工林は使われずに放置されている。少しでも、そうした木を使って家づくりができないか。そんな問題意識のなかで生まれたのが、原木の確保から製材、流通、設計、建築までを協業化したハウジングオペレーションシステムだった。
「建主の要望をかなえて愛着をもってもらうのはあたりまえのこと。住宅は、そのうえでさらに文化として残るものでなければいけない。そのためには材料が大事になるんです」
 このシステムで特筆すべきは、乾燥技術の研究などを重ねて、人工林で間引きされる間伐材を建材として使えるようにしたことだ。それによって天然林を守り、人工林も活性化させることが可能となる。
「『森を建てよう』というのがわれわれのスローガンで、これには森林の保護育成と、森に住まうかのような豊かな家づくりを、という想いが込められています。そしてお客さんはその理念に共感してくれた方がほとんどです」
 もちろん携わる職人も設計者も、みんなが誇りをもって家づくりに取り組む。その理念は、すでに東京、京都、名古屋と全国各地へ、また北海道で家を建てる海外の人たちにまで広がっている。HOPのつくる「森」が、北海道の枠を越えて育ち続けている。

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