
引き継ぐための増築
作品/「感泣亭」
原設計/生田勉
改修設計/Eureka(エウレカ)+三浦清史
1964年頃に生田勉によってつくられた住宅。生田は後の増築を想定して、敷地に余白をもたせて設計していた。50年近くたって、その余白に、若手建築家組織のEurekaと三浦清史さんが、コミュニティ・スペースを増築した。
取材・文/大井隆弘
写真/浅田美浩
「亭」を問いなおす
折れ曲がって続く木の壁。ガラス戸で囲われた開放的な空間。煉瓦敷きの床には、たくさんの椅子とテーブルが置かれ、表札には「感泣亭(かんきゅうてい)」の文字。料理屋だろうか。いや、そうではない。これは、かつて詩人・小山正孝(以下、小山)が暮らした家。以前は主屋だけ立っていたが、最近になって小山の息子夫婦が越してきて、古くなった主屋を改修し、その脇にモダンな建物を増築した。
「感泣亭」という名は、小山自身がつけたそうだ。小山は「感泣」という言葉を好み、自らの詩集のタイトルにも用いた。後ろにつく「亭」という言葉は、『広辞苑』を見ると、「住居」、「文人・芸人の号」のほかに、「料理屋の屋号につける語」として説明されている。すると、料理屋と感じさせた近年の増築は、「感泣亭」の意味を広げたようだが、増築の詳細を知るうちに、それはむしろ積極的な「亭」の問いなおしであった、と思うようになった。





