復原にも創作を
作品/「OKA MASAKAZU HOUSE」
原設計/アントニン・レーモンド
改修設計/元良信彦
1934年にアントニン・レーモンドによってつくられた住宅。素木による軽井沢らしいこの住宅は、何十年もの時を経て、原型をとどめないほどに改修されていた。その住宅が、創意をもって復原された。
取材・文/豊田正弘
写真/川辺明伸
74年前の姿に戻す
この改修の前、別邸の姿を眼前にした建築家は衝撃を受ける。大幅な増改築が、意匠・使い勝手ともに大きなダメージを与えていたのだ。外壁にはモルタルが塗られ、開口部は味気ないアルミサッシで覆われ、まわりの緑への視線を塞ぐように和室やボイラー室が増築されていた。レーモンドの設計による住宅とは、話を聞くまでは想像もできなかっただろう。
アントニン・レーモンドは数多くのモダニズム建築を設計し、日本建築界に大きな足跡を残した。そして軽井沢の地にあっては、観光名所となった「聖パウロ教会」(1935)、自らの「夏の家(現・ペイネ美術館)」(33)をはじめとする「軽井沢式」と呼ばれる別荘群などにより、日本を代表する避暑地のイメージづくりに寄与している。
岡庄五(まさかず)氏の依頼によるこの別邸も、そうした別荘群のひとつとして34年に竣工した。それが前記の状況に至ったのは、「夏の家」から「1年中の家」になったため。軽井沢の冬はきびしい。夏の清涼な気候を前提とした住宅にとって、防寒仕様を求められるのは酷なことだったにちがいない。
今回の改修にあたり、岡氏の関係者である建主さんからは元良信彦さんにふたつの条件が提示された。それはまさにヴィンテージ住宅を未来に引き継ぐためのテーマといえよう。
1、別邸は将来にわたる利用方法を考慮したうえで可能な限りオリジナルに戻すこと。
2、隣接するふたつの敷地、母屋と呼ばれる建物を含む部分と原生林を含めた計画とすること。
「OKA MASAKAZU HOUSE」の改修前の姿を見る
「OKA MASAKAZU HOUSE」のオリジナル原図を見る
「OKA MASAKAZU HOUSE」の平面図・配置図と改修箇所を見る
「OKA MASAKAZU HOUSE」の断面図と改修箇所(2009年)を見る