特集/その4

住み続けることへの
強い意志

 取材に訪れた4月は、これからさらに緑が濃くなる季節。それでもゆるやかな芝の斜面を上がった先にある別邸は、戦前に花開いた豊かな別荘文化を鮮烈にイメージさせる。海外在住の建主のご家族が初めてこの改修を目にしたときは、幼時にタイムスリップしたように茫然とされていたそうだ。
 室内にはレーモンド夫人であるノエミ・レーモンドのデザインした椅子が集められ、おだやかな気配に満ちている。2階床を支える丸太の根太、木製掃き出し窓などの華奢な造りは驚くほどだ。オリジナルの3㎜厚のガラスは小さなお子さんが割ってしまったこともあるそうだが、それを通して揺らめく景色は味わい深い。「低気密・低断熱」と元良さんは笑うが、夏の別荘にまで高性能を求める現代住宅のほうに疑問を感じてくる。
 最後にこの作品から学ぶべきは、よい家をとことん住みこなし、ずっとメンテナンスを続けようという建主の強靱な意志である。木製雨戸の開け閉てにはコツが必要だし手間もかかる。秋口の冷気には暖炉を焚く。美しい外壁は昨年塗り直されたという。庭の手入れも含め、この家の継続には覚悟が必要だ。その姿勢に心から敬意を表したい。


「OKA MASAKAZU HOUSE」の改修前の姿を見る
「OKA MASAKAZU HOUSE」のオリジナル原図を見る
「OKA MASAKAZU HOUSE」の平面図・配置図と改修箇所を見る
「OKA MASAKAZU HOUSE」の断面図と改修箇所(2009年)を見る

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Movie 「 OKA MASAKAZU HOUSE 」

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