特集/その2

増改築のたすきをつなぐ

作品/小石川の住宅「私たちの家」改修
原設計/林昌二 + 林雅子
改修設計/安田幸一

林昌二・林雅子夫妻の自邸「私たちの家」は、1955年に竣工して以来、増改築を重ね育ってきた。
その住宅を建築家・安田幸一さんが、新たな住まい手として引き継ぎ、増改築のたすきをつないだ。

取材・文/伏見唯
写真/藤塚光政

 日本の古建築を思い起こせば、古びた風情をひとつのものとして感じてきた建築が、じつは長い時間をかけて少しずつつくられてきたという含蓄に気がつくと、その建築の魅力がいっそう際立って感じられることがある。江戸時代らしい豪奢な龍の彫刻付きの小柱が、建立してから1000年近く後に付加された法隆寺金堂。質素な古代建築を修理する際に、江戸時代らしい意匠を施すことで、そのときの修理箇所をはっきりさせ、むしろ法隆寺の古代性をじゃましないように配慮したものだともいわれている。あるいは桂離宮でもまた、八条宮家の親子二代にわたって、古書院、中書院、楽器の間、新御殿が漸次増築されることで、庭を包むように雁行する有機的な平面が出来上がっている。
 こうした魅力は、時を重ねた古建築ならではのものであり、現代の建築にはあまり見られないものだろうなどと考えていたところ、林昌二・雅子夫妻の「私たちの家」があった。1955年、ふたりの結婚を機につくられた「私たちの家」は、2回の増改築を経ることで、およそ増改築でしか生じえない時間を内包した構成になった。


>> 「私たちの家」のオリジナル原図を見る
>> 「小石川の住宅」(「私たちの家」改修)の平面図と改修箇所(2013年)を見る
>> 「小石川の住宅」(「私たちの家」改修)の断面図を見る

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