特集2/プロセススタディ

周辺環境へのレスポンス

「HAT」を訪れてまず魅了されるのは、4方向への視線の抜けだろう。十字形の平面がそれを強調する。とくに1階では、南北のデッキとの一体感、西側キッチン越しの緑、そして東側の公園と、それぞれの距離感が楽しめる。
 その心地よさは、繊細な建築的操作にも起因する。スケール感のあるものが目につかないようにしているのだ。冷蔵庫はパントリーのなかに収められ、エアコンも壁付けでなく床置きに。柱梁、根太、垂木などの構造材、開口の枠や框などの建築要素も慎重に存在を消されている。
 また児童交通公園は、道路の幅、信号機、突き当たりの「ミニ東京駅」に至るまで、子どものサイズに合わせて小ぶりにつくられているため、その眺めは不思議なスケール感を加速する。
 竣工から約3年。カーテンレールは備えてあるが、カーテンを取り付ける予定はない。オープンな家を通して、奥さまは多くの知り合いを得たようだ。以前の南側通路はテラスに続く庭となり、シロツメクサやレンゲのグランドカバーが育つ。すでに周辺の誰もが知るこの家は、その魅力と存在感を今後も増していくにちがいない。


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Movie 「HAT」

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