特集2/プロセススタディ

シンプルさに至るまでの助走

 次回の提案を約束した駒田さんたちがまず決定したのは、駐車場と家の配置。ふつうに考えると、南に駐車場、北に家が並ぶ。しかしそれでは外部空間がほとんど残らず、前面道路と家が近すぎる。そこで車を家の下に入れて、家全体をもち上げた。すると左右(南北)のオープンスペースにテラスが置けて、レベルを上げることで道路との適度な距離感がつくれる。そして公園に向けた長い視線が得られる。
 ここでは、個人住宅の設計でありながら、家の公共性が強く意識された。建物が街のものになるという感覚。公園の正面にあり強い軸性を受けることから、その構えが決まっていく。この土地を購入した建主の想いに応えるように、公園にきちんと向き合う四角くカッチリとした姿。
 開放的な1階に対して、プライベートな空間となる2階には屋根がスポッとかぶせてある。階ごとの性格の違いを、ガラスの外にもうひとつ覆いをつくることで表現する。ファインフロアを敷いた軒下は狭く、走りまわれるのは小さな娘さんだけだ。しかし鉢植えを置いて楽しめるし、掃き出し窓であっても落下の不安がない。屋根の北側上部のラインは、斜線制限をギリギリでかわしている。
 そのプランは、面積を考慮すれば基本的にワンルームとなる。だが見え隠れする場所は必要だと駒田さんたちは考えた。ではどう仕切っていくか。
 まず壁だけを立てる案。これはボックスなどを配しても収納が足りない。
 次に1個の「箱」を置いてみる。これは1階がニュートラルになりすぎて気持ちがよくない。
 そして四隅に「箱」を置く案が出てくる。この時点では、室内側の壁はそれぞれ少し傾いて1階と2階を貫いている。


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