「競争の原理」で
職場に緊張感を

 平成建設が注目されるもうひとつの理由が、職人の多くが大卒・大学院出身の高学歴の若者たち、ということだ。従来の、丁稚奉公的な職人のイメージと大きく異なる。平成建設が求める、独特の「職人像」があるからだろう。
 平成建設で「職人」と呼ばれるのは、木工事に関するすぐれた技術をもつ大工と、型枠や鉄筋など基礎から軀体にかかわる工事をひととおり扱う「多能工」。テレビや雑誌では、「多能工」についてピックアップされることが多いが、秋元さんは「3種類や4種類の工事ができるのはあたりまえ。10種類くらいできるようになって、初めて多能工と呼べる」と手きびしい。
 彼らには「先輩の技を盗む」だけにとどまらず、教えられることを次々に吸収し、自分で判断して動くことが求められる。そのため、目的意識や向上心をしっかりもっていなければとても務まらない。結果として、高学歴者しか残らない、ということかもしれない。ただ、「職場には競争の原理が働いていることが望ましいと思います。いい意味で、つねに下の人間に脅かされていないと、上の人間の成長が止まってしまう。だから、新人のレベルも下げられない」(秋元さん)。つねに上を目指す緊張感が、会社のなかに満ちている。
 2008年からは毎年50人前後の採用を続ける。「もっともっと人を育てたいから」と秋元さんは笑う。むろん提供する建築の質を上げていくことも忘れてはいない。神奈川、東京へ少しずつ進出しているのも、足場固めの一環なのだろう。今後、住宅が余る時代になるといわれても「家もオフィスも、現状に満足している人は少ない。不満がある限り、必要な建築はなくならない」と強気だ。既存のゼネコン、工務店が将来への明確なビジョンが描けないでいる現在、平成建設の躍進は一層まぶしいものに見える。

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