デビュー前から大きな話題を呼んだ豪華寝台列車「ななつ星in九州」が2013年10月15日、ついに運行を開始した。贅をつくした内装、とくに全室に備えたというシャワールームはどんなものなのか。初運行の直前、ベールを脱いだ車両を取材し、水まわりを含めた全体の開発にかかわったJR九州の香月弘二さんにお話をうかがうことができた。
以下に、その全貌と開発の経緯を紹介しよう。
JR九州といえば、現社長の唐池恒二さんとデザイナーの水戸岡鋭治さんの名コンビが数々の観光列車を生み出し、ローカル線を復興させてきたことはよく知られている。ななつ星はそんなふたりにとってはいわば集大成であり、世界に冠たるかのオリエント急行を目指して開発されたもの。なかでもこだわったのが食堂車の復活だったという。
「ブルートレインや新幹線の食堂車が廃止になるなか、われわれは時代に逆行し、九州新幹線開業前の1992年には、ビュッフェ車や家族向けのコンパートメント席がある特急列車つばめをつくった実績があります。そこから、九州を寝台列車で一周しつつ、各県ならではの車窓から見える風景や『食』、地元の方々とのふれあいから生まれる人間のあたたかみをまるごと味わっていただく旅を世に送り出したいという思いが生まれてきた」と香月さんは語る。
機関車を除く全7両の車両は、1号車が昼は共用のリビング、夜はピアノバーになるラウンジカー、2号車がダイニングカー、3~6号車は各3室のスイートルーム、7号車は2室のデラックススイートという編成だ。
1号車と7号車の両端は全面開口で、どちらかに機関車が連結するため、最後尾になると、車窓からどこまでも延びる線路と遠ざかっていく景色を存分に眺められる。わずか定員30名のゲストのために九州を一周する専用列車というだけでも、いかにぜいたくかがわかる。





