特集5/ケーススタディ

シェアハウスには、さまざまな手法が生まれている 成瀬・猪熊建築設計事務所 ホームページへ 成瀬・猪熊建築設計事務所 ホームページへ LT城西 ホームページへ

 名古屋駅からタクシーに乗って5分ほど、小さなオフィスも混じる下町的な住宅地に「LT城西」は立っていた。駐車場の奥にある矩形のファサードは、周囲の2階建て住宅より少し大きい不思議なスケール。うがたれた大小2種類の窓は、内包する2.5層の空間を素直に表現している。休日の朝10時、右手脇のエントランスを入ると、静寂な空気のなか、住人の女性が焼くチョコレートクッキーの甘い香りが漂ってきた。

建て主と設計と運営のチームワーク

 設計者の猪熊純さん、成瀬友梨さんは、最も積極的にシェアハウスの提案や発言を続けている建築家のひと組。2階リビングのラグに座って、成瀬さんのお話をうかがう。
 建て主さんはまず、「共に暮らすことのできる若い方々に良好な住環境を提供したい」と考えたそうだ。最初から合理的な形でつくろうと思ったため、インターネットで成瀬・猪熊建築設計事務所を発見し、プロジェクトがスタートする。ホームページ「LT城西へようこそ」(http://lt-josai.com/)は驚くほど充実した内容で、その情熱がよく伝わってくる。高断熱・高気密の仕様、無垢材のフローリングや顕熱交換器の採用などは、建て主さんからの要求によるものだ。
「私たちはコストの試算を始めると同時に、『運営者がいないとシェアハウスはできないですよ』と建て主さんに伝えていました。すると2、3カ月後、名古屋の大家さんが集まる会で、運営会社デクーン奥村秀喜さんを見つけたと聞きました。彼のシェアハウスも見せてもらい、一緒にやりましょうとなりました。早い時期から運営者が決まって、相談しながら進められたのはとてもよかったと思います。設計者と運営者の関係で大切なのは、やはりコミュニケーションです。どういうことを目指しているのかを、とことん打ち合わせていくことがだいじなんですね」
奥村さんの運営経験から、たとえばキッチンや洗面所や下駄箱のひとり分の収納量などを決めました。でも設計途中で、当初の想定と違うところは出てきます。お弁当をつくる人が多くなりそうで、冷凍庫の数を増やしたいとか。そんなときに、建て主さんも含め、私たちは新しいことをやっているチームなんだという思いが共有できていれば、みんなで考えて臨機応変に対処できる。クレームのやりとりではなく、お互いに知恵を出して解決策を探せる。その信頼関係をつくるのは、ここに限らず重要なことだと思います」


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Movie 「LT城西」

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