特集/論文

シェアハウスという新しい住み方

「シェアハウス」と呼ばれる、家族でも恋人でもない他人との共同生活形態が若者を中心に実践されはじめ、社会的な注目を集めるようになったのは2000年頃からである。とくに、友人同士でマンションや一戸建てを借りて入居し生活する自主運営型(ルームシェア/ハウスシェアとも呼ばれる)に対して、事業者がオーナーと居住者のあいだに介在するタイプの物件が注目を集めており、現在「シェアハウス」と呼ばれているのはおもにこの事業者介在型である。事業者は、入居希望者の募集や居住者のマッチングのほか、共同生活に関するさまざまなオペレーションなども行い、いわばオーナーと居住者双方のリスクの一部を引き受けることで家賃のなかから収益を上げる。たとえば、3LDKのマンションを家族向けに15万円で貸すよりも、3人の単身者に6万円で貸すことができれば18万円の家賃収入が入り、退去による空き室のリスクも3分の1となる。晩婚化や非婚化に伴う単身期間の延長などを背景として、家族向けマンションの空き室の増加、ワンルームマンション規制につながる地域の空洞化が問題とされるなか、シェアハウスは新しい生活のモデルとしてだけでなく、新しい不動産事業のモデルとして、地域再生のための足がかりとしても期待をかけられているといえるだろう。
 自主運営型に比べて、事業者介在型のシェアハウスはそれほど低廉な家賃を設定できるわけでもなく、それほど居住者が自由に住まいを運営できるわけではないが、長期的には構造的な利点を多くもっている。たとえば、主要メンバーの結婚や引っ越しなどを機に解散することが少なくない自主運営型に比べて、事業者介在型であれば長期的なスパンでシェアハウスをデザインすることができる。シェアハウスを専門に扱う不動産情報サイトの調査によれば、事業者介在型シェアハウスの居住者の平均年齢は約29歳で、78%が女性、正社員の比率は35%程度で上昇傾向にある。入居期間は業者によってバラつきが大きいが、およそ1〜2年程度といわれており、それほど長いわけではない。流動的なライフステージにある若者が入退居を繰り返しても、事業者はシェアハウスの継続性を前提として内装や生活設備への投資を考えることができる。大型の冷蔵庫を含む充実したキッチン設備、ジェットバスのついたバスタブや、乾燥機付き大型洗濯機、ビリヤード台や豪華なソファに囲まれたモダンなリビングなどは、事業性がなければなかなかできない注文だろう。むしろ、リッチで楽しそうな共同生活のイメージが広がったことで、シェアハウスの需要が掘り起こされた面もある。同調査によれば、1995年の段階ではわずか十数物件ほどだったシェアハウスの取り扱い件数は、2013年までの累計で約1400物件・1万9000ベッドを超えている(*1)。

*1:シェアハウスを専門に扱う情報サイト「ひつじ不動産」(http://www.hituji.jp/)の統計による。
*2:2013年6月から毎日新聞が「脱法ハウス:1.7畳、手届く四方の壁 住民同士会話なく」として報道したことがきっかけになっている。
*3:こうした問題を考えるための情報サイトとして、筆者も参加するSHARE ISSUE ARCHIVES (http://share-issue.org/)を参照のこと。


>>総住宅数、空き家数の推移(全国)を見る
>>シェアハウスの累積住宅数の増加推移の平均を見る

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