特集5/インタビュー

阿吽の呼吸の庭づくり

 それから3軒目の家が、「奥庭の家」(04)です。横内さんがつくる家はいつもそうですが、建築と庭が一体なので、室内に入っても建物のなかにいるという感じがしない、庭の一部にいるようです。最後の仕上げのときに、先生が室内から庭を眺めて、「あそこに1本、木を植えようか」とおっしゃった。見通したとき、少し間が抜けて見えたからでしょう。
 最近では、現場に横内さんが来られるとわかっている日は、木を3本ほど余分に持っていき、最後の仕上げに、先生に仕事をしていただきます(笑)。ご自身もそれをご存じで、「名取さん、ある?」と聞くので、「支度してありますよ」と答えると、3本のなかからどの木にするかを選び、配置を決めてくれます。造園屋よりすごいセンスとバランス感覚で、いつも感心します。
 庭は家ができてから頼まれることも多いですが、横内さんはありがたいことに、設計が始まるときから呼んでくれるんです。そして、図面とともに自分のイメージを話してくれる。それを聞いて、こちらもイメージをふくらませて、材料探しに入るわけです。
 図面には樹種や大きさまで全部、書き込んであります。植生をよくご存じで、日陰には日陰に向く木を選んでくれます。ただ、現場に行くと隣家の窓のそばは指定より大きめの木にしたり、見つからない樹種があると変更したり、そのへんはほとんどお任せです。
 庭は時間がたつとよくなるといいますが、木の生長に任せてはだめなんです。出来上がったときにほぼ9割ぐらいの完成度にもっていかないと。なおかつ、成長の遅い木のほうが、後々メンテナンスが楽です。先生も私も、いかにもつくった庭は嫌いですから、自然に茂って、何年かに一度、軽く剪定すればすむような庭を考えています。
 横内さんはお施主さんの要望がない限り、カエデ、ソヨゴなど、ほとんど国産の樹種を使います。しかも、畑でつくった木より、自然に山からとった木を好まれます。山取りの木のほうが生長が遅いし、まわりのじゃまなものを避けながら育つので、樹形も自然で、やわらかな枝が出るんですよ。
 もう22軒も一緒につくってきたので、近頃は自分がつくる庭が、だんだん横内流の庭みたいになりつつあります(笑)。

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