
庭と建築、一体化の先に
作品/「帝塚山のセミコートハウス」
設計/横内敏人
大阪有数の高級住宅街に建てられた住宅。都市のなかにあっても完全に閉じるのではなく、少し開いたセミコートハウスという形式を用いている。 家の中に入ると都心部とは思えないほどに豊かな庭、そしてその庭と一体化したような建築に驚く。
取材・文/伏見唯
写真/藤塚光政
息をのむ、という表現はおおぎょうなだけに使いすぎると逆に軽く聞こえてしまいそうだが、勘ぐりを恐れずにいえば、小さなポーチを経て2畳ほどの玄関から格子戸を開けると視界が突然広がり、大きなベルナール・ビュフェの絵画を背にした暗く重厚な室内と、奥深くまで続いていそうな明緑の庭が隔てなくつながっていそうな風景に、思わず息をのむ。横内敏人さんが都市の住宅でたびたび用いるセミコートハウスの力を出鼻から痛感してしまった。「帝塚山(てづかやま)のセミコートハウス」である。
帝塚山は、関西ではよく知られた大阪有数の高級住宅街である。古くからの邸宅とともに村野藤吾、竹原義二、竹山聖などの著名な建築家による住宅が並び立っているが、それぞれの住宅の風情が庭や垣の緑を緩衝剤として折り合いをつけながら、街全体の豊かな緑もあいまって、心地よい住宅街を織りなしている。村野藤吾が設計した住宅の銀閣寺垣のような高生垣と向かいあうように、不思議と緑と相性のよい黄土色の炻器質タイルが外壁全面に張られた住宅がたたずむ。





